水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

出羽島大池(徳島県出羽島)

【てばじまおおいけ / 天然記念物シラタマモ生息地】

世界でたった四ヶ所! 激レアなシラタマモが生息する池がこんな小さな島に・・

徳島県の牟岐港から渡船で15分ほどの海上に浮かぶ出羽島(てばじま)は、クルマが一台もないのんびりした漁業中心の島。この島は温暖な徳島県の中でも、もっとも暖かい土地ということで植生も亜熱帯系の照葉樹が多い。
そんな島に世界で四ヶ所しか生息地がないという稀少なシラタマモという水生植物が繁茂する池がある。海とは洲一本で接しており、印象としては想像していたより大きく、何万年もの間、海没したり干上がりそうになりながら今に生き残ってきたのかと思うと感慨深い。

出羽島大池の形態と景観

天然記念物シラタマモ生息地

港の前に水槽が設置されている。生物の進化の過程を封じ込めたような存在で学術的に貴重なシラタマモも、素人目にはただの水草にしか見えない。
多くの未踏の海跡湖たちを見てきたが、出羽島大池にあるなら日本には他にもシラタマモが生息する池がありそうに思った。


海とを隔てる洲は一抱えほどの丸石

いちばん狭いところで25mほど

海水の浸入はじゅうぶん考えられる。同じように礫の洲によって海と隔てられているキワキワ立地の池の事例を下に挙げる。

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海面より池の水面の方が低く見える?

通常、このような立地の池は内陸側から流れ込む淡水と海から浸透してくる海水とで、海面よりは湖面の方が高くなる。(そうでなければ、池はすべて海水になるはず)
まばらな礎石の岸は海水をよく通しそうだが、潮汐のリアルタイムな影響も受けていないものと思われた。

流れ込み側?

湿原状になっており増水時のみ水没か。


地下水湧出口?

湧き水の湧出口のような砂のくぼみが四、五ヶ所見られた。

深場と池底の丸石

一ヶ所、藻が途切れた深場があった。オオウナギが住処にしているようでもあり、生物が藻を掘った穴とも考えられる。右は池底に転がっていた丸石。


野口雨情の詩に詠まれた大池

出羽島は周囲4km、牟岐港からも4kmほど。雨情は舟で島を一周しながらこの歌を詠んだのだろう。歌にある「蛇の枕」は残念ながら災害で崩落してしまった。

舟て廻れは出羽島一里
島にや大池 蛇の枕
雨情

オオウナギらしき魚影が!

小さな魚もいるような水面を動く波紋もあったが魚種は確定できず。ただ、50センチはあろうかという大型の魚影を確認。
泳ぎ続けるタイプの魚ではなく、止まっては、ときどき泳いで移動する。池の底が全体的に浅いので姿が丸見えだが、鳥の餌食にならないほどの大きさがある。
池に一ヶ所だけある深場に逃げ込んだあとは姿が見えなくなった。どうもこれがこの魚の寝ぐらのようだ。
あとで写真を拡大してみると、オオウナギ(カニクイウナギ)のようだった。近くには二ヶ所、オオウナギ生息地で天然記念物指定されている場所もあるだけに納得。

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ポットホール?


出羽島の風物

出羽島の集落


クルマがない島で活躍するコレ

手押し車! でも、エンジン付きのハイテク車も。


丸石積みの港護岸



 

出羽島大池へのアクセス

牟岐港の駐車場とトイレ

牟岐港から渡船で15分

味わいのある船。たかが4km弱の海路とはいえ、けっこう揺れた。最大70人乗れるというが島民の数と同じ。券売所などはなく、勝手に船に乗っていれば料金は出航後、船内で現金徴収。小銭を忘れずに。


窓から右手に見える出羽島

出羽島の港


港から集落を抜ける

集落のはずれから山道


大池への分岐


 

島の公式パンフレット



 

マップ

現地案内マップ

島の地形のみならず情景や風情が伝わってくる素晴らしい鳥瞰図!
渡船の中で印刷された紙の鳥瞰図ももらえる。

Googleマップ