人の手で「一級河川」となった天然の水たまり
河口湖の形態と景観
吐き出し
もともとの河口湖は流出河川はない水たまり状態。よって増水時には湖畔の村は冠水してきた。
江戸時代に手堀りトンネルとしては日本一、長さ3.8kmもの水路を掘削して河口湖の水を山向こうの集落に導水することに成功。
以後、大正、昭和と新たな導水トンネルが開通し、三本のトンネルが現役で稼働し、治水、利水、発電に資している。
南岸(河口湖町)
平地が広がり、湖名が冠せられた河口湖町が広がる。岸はビーチ状の場所も。
南岸(道の駅の前の浜)
2020年5月撮影。
河口湖の産業
ブラックバス釣りが公認された世界遺産
世界遺産の構成要素として登録された水辺でありながら、特定外来生物のブラックバス釣りが公認されている治外法権特区のような水辺。ほか、へらぶなや冬期はワカサギ釣りもさかん。
南岸にある道の駅側の湖畔は芝生広場になっていて気持ちいい。
釣り用レンタルボート、遊覧ボートは湖の東の方に多い。
釣りをするには遊漁料のほか遊魚税が必要。ワーム禁止。
超法規的措置ともいえるバス放流
河口湖では2005年に外来生物法が施行されてからも、例外的な措置でブラックバスの放流がつづけられている。本来なら違法行為となる特定外来生物の放流が、地元の強い要請でひっくり返るめずらしい事例といえよう。しかも河口湖は2013年に世界遺産の構成要素として登録されたこともあって、なんとも不思議な立場に置かれている。
2013年6月の漁場計画更新時に、特例として県からブラックバス放流継続の認可がおりたことで議論が沸騰したこともあった。
2024年もゴールデンウィーク前に河口湖の三ヶ所のワンドでバスの放流が行われた。このバスはどこで蓄養されたものなのだろう。ヘラブナの蓄養なら四国の満濃池や大阪の溜め池などがあるが、バスの蓄養はどこでどんな業者がやっているのだろう。
なお漁協と町は10年以内に漁業権の解消とバス依存体質からの脱却をめざしているそうだ。
山梨県は29日までに、富士山麓の河口湖、山中湖、西湖で地元漁協が行っている外来魚ブラックバスの放流を、来年以降も認める方針を決めた。(中略)2005年施行の外来生物法は、ブラックバスの放流を禁止。しかし山梨県の3湖と神奈川県の芦ノ湖では、法施行前から漁協が漁業権を持ち、例外的に放流が認められた。3湖では釣り人から遊漁料を徴収している。
今年12月に漁場計画が10年に1度の期間満了を迎えるため、各漁協は更新の意向を表明。山梨県は漁協がブラックバスの放流数を減らしている上、「持ち出し禁止の看板設置」「湖に3重の網を張り、外部に逃げないようにしている」など、環境省の基準を満たしているとして、更新を認めることにした。
県によると、河口湖、山中湖、西湖でのブラックバス放流は、03年の計45.3トンから、昨年は計6.9トンに減少した。
(2013/6/29 日経新聞)
遊魚料と別に払う必要のある「遊魚税」とは!?
漁協に払う遊魚料とは別に、河口湖町に収める遊魚税券も購入・掲示しなければならない。
税収のためなら外来魚の放流にも役所のお墨付きも与えて憚らない産業構造は議論もあるだろう。吸う場所はどんどん閉鎖するのに税収には期待するタバコの構造を思い浮かべてしまう。
富士河口湖町遊漁税条例
(平成15年11月15日・条例第54号)
(課税の根拠)
第一条 町は、相模川水系一級河川河口湖(以下「河口湖」という。)及びその周辺地域における環境の保全、環境の美化及び施設(駐車場、公衆便所、河口湖畔周辺道路その他の施設をいう。)の整備の費用に充てるため、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号。以下「法」という。)第七百三十一条第一項の規定に基づき、遊漁税を課する。
河口湖の水田発祥の碑
河口湖の水田発祥の碑が、南岸の道の駅の近くにあった。
河口湖周辺の施設・設備
新道峠とツインテラス
標高1600mから河口湖、山中湖を俯瞰
河口湖と富士山の絶景。展望台近くまで舗装路。第一展望台は地元テレビ局の定番スポット。
「FUJIYAMAツインテラス」が2024年5月開業。合わせて芦川のすずらん群生地駐車場から先はマイカー規制となり、シャトルバスが運行されるようになった。
シャトルバス発着所・駐車場
登山路でのアクセス
駐車場あり。
芦川のすずらん群生地
スズランの開花期は5~6月頃。
湖畔にある道の駅かつやま
河口湖を満喫する拠点として最適な立地。
湖岸路とボート
1周25kmほどの湖岸路はサイクリングにも最適。河口湖マラソンやウルトラマラソンも開催されている。写真は2007年9月の娘と弟とその愛犬(故犬)。
富士山噴火に翻弄された富士五湖
以下、世界遺産センターの掲示物より抜粋。
富士五湖は、富士山と御坂・沢山地との間に噴火の噴出物によって水がせき止められることでできた湖である。本栖湖や河口湖は、約17000年前から8000年前には、ほぼ現在の形になったと考えられている。また、約10000年前には大量の溶岩流下により、剗の海(せのうみ)・古忍野湖が形成された。約5600年前ごろになると古忍野湖は徐々に干上がり、その東側に古山中湖ができた。その後、鷹丸尾溶岩流により「山中湖」ができた。
約1200年前には、剗の海が青木ヶ原溶岩流により精進湖、西湖に分かれ、現在の富士五湖の形になった。
(太字は筆者施す)
河口湖と富士山
富士山世界遺産センター
外観と駐車場
展示物
富士山自然観察園
剣丸尾溶岩流を散策で観察できる。世界遺産センター内に遊歩道入口あり。
湧水のメカニズム
西湖のネイチャーセンター展示物より。
信仰と世界文化遺産
富士山の顕著な普遍的価値
西湖のネイチャーセンター展示物より。
富士講の心身を清めた水辺
富士山信仰と周辺湖沼と池は切ってもきれない関係があり、世界文化遺産の構成要素にもなっている。以下、掲示物より抜粋。
富士議の修行のひとつに、「八海巡(はっかいめぐり)」があります。富士山麓に点在する八つの水辺を巡り、各所で身体の一部または全身を水に浸し心身を清める水行を行いました。「内八海」と呼ばれた山中湖・明見湖・泉津湖(せんづこ・泉端 / せんずい)・河口湖・西湖・精進湖・本湖・四尾連(泉津湖が加わる以前は須戸湖)の八つの湖は、16世紀後半に富士講の開祖とされる長谷川角行が修行した場所と伝えられ、のちに信仰の対象となりました。このほか、琵琶湖(滋賀県)などの「外八海」や忍草村(しぼくさむら・忍野村)の「忍野八海(おしのはっかい)」でも修行しました。
富士スバルライン
河口湖の南にある富士吉田町を起点とする富士昴ラインは自転車のヒルクライマーにも人気。年に一度、富士ヒルクライム大会も開催される。(撮影:2007年9月)
富士河口湖駅
富士山博物館(道の駅なるさわ)
富士山コンビニ問題(2024)
富士河口湖内のコンビニで、富士山がバエる写真が撮れるといってコンビニ周辺道路に外国人観光客が大挙し交通が混乱する状態が社会問題に。けっきょく富士山が見えないよう黒幕を張るというという対策がとられた。
下の写真はその数日後。違うコンビニに外国人が大挙していた。
マップ
現地案内マップ
絵図
富士山世界遺産センター、西湖のネイチャーセンター展示物より。
ニッポン湖沼図鑑マップ
Google マップ
マークした場所に道の駅。