日本一深い湖。水環境史上最悪の、信じがたい愚挙の舞台
東京タワーがすっぽりと水没してしまうほどの水深があり、日本一深い湖沼でもある田沢湖。最大水深は423mで、しかも湖底はフラット。内陸にあるが湖底は海水面よりも低い。
こんな不思議な形態の湖が生まれた成因も不明。しかも世界でこの湖にしか生息していない固有種の魚を、湖に施したダム化政策によって絶滅させてしまうという、世界の環境史上でも例を見ない愚行が行われた過去を持つ。戦争に向かう軍国主義の余波という事情も含め、浅慮な策が国によって堂々と行われた反省例として長く伝えたい。
しかしながらこの絶滅種には、70年後に一つのうれしい奇跡が待っていた。
田沢湖の成因と形態
成因は謎
湖周20kmのきれいな円形は火山由来によるものと考えられているが、陥没によるカルデラ湖かどうかについては議論がある。
水源は湧水と人工流入口と複数の流入河川
水源は湧水と外輪山からの小河川の流れ込み。
1940年に水力発電のために温泉で有名な玉川の水を人工水路で導水したために酸性化。クニマス絶滅だけでなく農業用水としても使えなくなるなど被害をだした。現在も水質を中性化させる作業はつづいている。
流出河川なし。ただし・・
水力発電用の人工導水路の放水口が南岸側にある。
日本一深い湖沼。冬でも結氷なし
深さ423m。湖が深すぎて冬期でも結氷はしない。
湖岸は水面下で切り立っており、400mの平坦な湖底までストンと落ち込んでいる。
貧栄養湖で水生生物は少ない
日本百景
タツコ姫の伝説
フォトジェニックな湖中に浮かぶタツコ姫像
湖畔の像は金色に輝き、永遠の美を求めて龍になった辰子姫の伝説を今に伝える。
辰子とクニマス
タツコが湖のヌシになり、黒く焦げた木の棒を投げると、それがクニマスになったという言い伝えがある。
この伝承からクニマスには「キノシリマス」という土地の呼び名がある。
田沢湖に生息する魚類
固有種クニマス
クニマスとヒメマス
クニマスは世界でも田沢湖でだけ繁殖してきた固有種。外見ではそっくりなヒメマスも生息しているが、ヒメマスは通常、北海道原産。味がよいことから全国各地に放流されている。
ジョルダン教授が新種として発表
クニマス(black kokanee)はベニザケ(ヒメマス)の亜種。完全な陸封型で、世界でも日本の田沢湖にしか生息していない固有種であることを、1925年に京大教授の川村氏から標本提供を受けた米スタンフォード大のジョルダン教授らが新種として論文発表。
クニマスの学名である「Oncorhynchus kawamurae」には、川村教授の名前が入っている。
本栖湖、西湖、琵琶湖への移流
クニマスは発眼卵が本栖湖、西湖、琵琶湖へ移流されたが、繁殖条件がきわめて厳しいクニマスが定着できたのは西湖だけだった。しかも西湖では長らくクニマスはヒメマスと混同され漁獲されていた。ただ食味がヒメマスより劣ることから、「味の悪い黒いヒメマス」として釣れても逃がすことが多かったという。
酸性に強いウグイが繁殖
足こぎボートで少し沖に出ると、大きなウグイの群れが追っかけてきた。ウグイは酸性の水にも強いとのこと。(2003年ごろ撮影)
周辺の渓流でイワナ
田沢湖周辺の渓流では天然のイワナが釣れるというが、写真は湖畔で買ったイワナの塩焼き。(2003年ごろ)
戦前まではアユも(田沢湖まるきぶね漁)
一人乗りのくり船(丸木舟)で漁が行われ、クニマス、コイ、イワナ、アユ、ウナギを漁獲した。
(写真は西湖のクニマス展示館)
田沢湖岸の景観・施設・名所
田沢湖発電所
田沢湖への放水口
玉川から人工水路によって田沢湖へ導水された流入口。完全コンクリートの水路が田沢湖に注ぎ込む。下を見ると色とりどりのものが・・何かと思ったら千羽鶴だった。(下写真・2023年8月)
ダムのようなものも
堰体の向こうは小さなダム湖になっている。
北岸
湖岸は岩場
御座石神社
岩岸の一角に、平らな岩棚が広がった場所があり、御座の石と呼ばれ、神社が祀られている。
この神社の境内にある辰子像は下半身が蛇体である。
辰子の鏡石
辰子が自分の美貌を映し整えたとされる岩が山中に。訪れた際は登山路が閉鎖されていた。
白浜(東岸)
遊覧船乗り場の港が近くにある白浜。2kmほど続く白砂のビーチで遊泳場になっている。
郷土資料館の駐車場にはトイレもある。
南岸
大沢沢川
もや森山
西岸
漢槎宮(浮木神社)
田沢湖畔の潟尻に流れついた浮木を祀った社。
浮き木様は奈良県の明神池のものが有名。池の真ん中でぐるぐる浮き木がまわるという伝説。
一方、田沢湖の浮き木は、湖面から斜めに2メートルぐらい頭を出した状態で湖底深く突き刺さった大木のこと。
辰子姫の像
田沢湖高原
アルパこまくさ
田沢湖の夕景が美しい。アルパこまくさは秋田駒ヶ岳のシャトルバス発着場。温泉あり。
2022年9月、2023年8月撮影。
乳頭山側から
秋田駒ヶ岳と。
マップ
現地案内マップ
ニッポン湖沼図鑑マップ
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Googleマップ
マークした場所は郷土資料館の駐車場。