水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

十和田湖(青森県十和田)

とわだこ。

湖の南側外輪山の発荷峠展望台から見た十和田湖。

広大な天然湖に生息する魚は、すべて外来種?

いわずと知れた北東北を代表するカルデラ湖。カルデラの中にカルデラが形成された二重カルデラ。航空写真を見るとその構造がみてとれる。国立公園、天然記念物、特別名勝のトリプルタイトル獲得。
ここを水源とし東の外輪山を抜ける渓流が有名な奥入瀬渓谷。また、西側の豊かな森は連峰をなし、世界遺産である白神山地へと連なっていく。
湖畔には温泉や宿泊施設、キャンプ場をはじめとした観光施設が立ち並び、遊覧船、カヌーツアー、ボートアドベンチャーなど手軽な水辺レジャーも充実。ここで多くを語る必要はないだろう。

カヤックの出艇場所にもなる市営の宇樽部キャンプ場。

釣りで特筆すべきはヒメマスの存在。ヒメマスを名物にと地元漁協が力を入れているが、じつはこの広大な十和田湖には、もともと魚類は生息していなかったと考えられている。現在生息しているニジマスやサクラマスを含めて、すべて人為的な放流によるものというから驚いた。どんなところにも遡上し生きていくタフなイワナでさえ、十和田湖には人の手を介してしか入れなかった。イワナの放流はなんと江戸時代。
つまり、十和田湖の魚はよそから持ち込まれたという点ですべて外来種といえるだろう。
標高400mと驚くほど高いわけでもなく、湖周40kmもの巨大な水辺空間に、一尾の魚の分け入るスキを何千年も与えてこなかったというのは神秘的な話である。なぜだろう。
唯一の流出河川である奥入瀬川には、観光ハイライトとなっている銚子大滝がある。これが魚止めの滝として立ちはだかってきたということらしい。ところが、明治時代にこの滝を迂回する魚道が造られた。日本初の魚道という話もある。
その後、海で大型化したサクラマスがこの魚道を通って十和田湖に侵入、定着して、たいせつなヒメマスを食べてしまうといって魚道を壊したとか。外来のヒメマスを守るために日本初の魚道を破壊となると、今だったらあれこれ言われそうだが、ヒメマスの放流も明治時代のことなので、こうなるとひとつの既成事実というか歴史といわざるをえない。
放流魚のうち、アユ、ワカサギ、ウグイは定着しなかったということも興味深い。全国三位の326mを最深とする深い湖底は、通常のトラウト類とちがって深場で産卵するヒメマスの生態とマッチしたようだ。今や十和田湖名物のヒメマスだが、原産は北海道の阿寒湖とチミケップ湖。いずれもエゾウグイが共生しているので、十和田湖のウグイ定着失敗の原因は何だったのだろうか。
入漁料必要。カヤック可能。


十和田湖のバードビュースポットである発荷峠展望台には駐車場、トイレ、売店が併設。


マークした場所は宇樽部キャンプ場。