和田堀公園。
2017年秋の掻い掘りでライギョが。
子どものころの手に汗にぎる興奮と思い出を胸に、全国あちこちのヘビーカバーの池でフロッグを投げてきたが、なかなか会うことができないライギョ。かろうじて懐かしい姿を見ることができたのは、はるか九州であった。
西日本でブラックバスがまだめずらしかったころはライギョはわりとどこにでもいた。地域性だろうか。なぜ、あんなにライギョがぷかぷかそこら中に浮いていたのか。フロッグを投げれば簡単に喰ってくる魚だった。小学低学年のころ、家裏の狭い水路で1mはありそうな大物がいつも同じ場所に背びれを出して浮いていた光景と緊張感は、40年たった今もはっきり覚えている。
ブルーギル、ブラックバスの勢力が強まるとともに、稚魚が喰われてしまうのかライギョはめっきり数を減らした。昭和の時代の話である。
そんなライギョが平成も終わろうというときに、東京二十三区内の公園池に生息していたとは。
戦後の復興期に築かれた和田堀池で、2017年秋に初めての水抜きが行われ、メーター級のソウギョといっしょにライギョも出てきたのだ。駆除された外来種は6千尾。しかしそれよりも数の多い1万匹の在来種がいたというから、長いあいだに微妙な共生関係が維持されてきたのかもしれず、興味深い。
過去に近くの井の頭池でもかいぼりが実施されたが、ブラックバスを完全駆除した結果、アメリカザリガニが異常繁殖して新たな脅威となっているそうだ。
アメリカザリガニやウシガエルのオタマジャクシだらけという異様な雰囲気の池は、全国のあちこちで目にしてきた。ブラックバスがアメリカザリガニの天敵ということもあり、生態系とはなかなか一筋縄ではいかない。
こんもりと木々の茂った二つの島をもつ和田堀池は、なるほど都心の池とは思えない鬱蒼とした雰囲気。岸には多様な種類の水生植物が茂り、水面にもホテアオイが浮かぶ。
そのわりには水質が少し黒みがかったウーロン茶系ステインで、あまり清涼感はないものの、野性味はすごい。確かにライギョが何十年も世代を交代してくるだけの秘匿性をもっていそうで納得した。外来魚とともに多くの在来魚が共存することができたのも、和田堀池のワイルドなキャパシティによるところが大きいのだろう。
隣には善福寺川が流れる。岸ぎわまで住宅地が迫る都市河川であるが、よく見ると石積みの護岸の区間がある。これは都心ではなかなか貴重なのだという。
そういえば、この池の掻い掘りの記事の中で、「水質を悪化させるコイなどの大きな外来魚」という記述があった。多くの鯉が外来種という認識が広まってきたのは良いことだと思う一方、この記述では鯉自体がまるで悪者のようでかわいそうだ。今は全国各地を元気に泳いでいる鯉たちも、いつかブラックバスのように駆除の槍玉にあがる日が来るのだろうか。
公園のかたわらには武蔵野園という鯉の釣り堀もある。
公園駐車場は有料。
マークした場所は、釣り堀の武蔵野園。