水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

西湖(山梨県南都留)

【さいこ / 富士五湖】

西湖の奇跡。絶滅したはずのクニマスが

田沢湖で絶滅したはずの固有種がひょんな場所で

1940年に田沢湖で人間の愚挙によって絶滅したクニマスが、それから70年、誰にも知られず子孫を残し生き続けてきた。
2010年に劇的なクニマスの存在が、さかなクンのお手柄で明らかに。
絶滅魚の正確なイラストを描こうとしたサカナくんが資料として西湖の「クロマス」を取り寄せたことが、70年ぶりの大復活劇の端緒となった。(写真はクニマス展示館)

クニマスハンターと500万円の懸賞金

西湖と本栖湖に卵を移植したという記録があり、三浦久兵衛さんという人が生涯をかけてクニマス探しに情熱を注いだ。その精神が受け継がれ、500万円の懸賞金をかけての全国でのクニマス探しを経て、2000年に秋田県水産振興センター(当時)の杉山秀樹氏がクニマス探しの経緯や生態をまとめた「クニマス百科」を出版。
この本がなければ、クニマスの発見はなかったはず。というのも、この本の中に記されたクニマスの産卵の生態を読んだ京都大学の中坊教授はこう思った。

「湖の深い場所に棲むだけでなく、深い湖底に産卵するのは、サケ科の魚としてはありえない!! 異常な生態だ!」

この人こそ、クニマスの発見者となる。


西湖のクニマスとは?

ヒメマスとクニマスは外見はよく似ており、黒っぽい体色以外は識別は困難。西湖では釣りのターゲットとして人気のヒメマス釣りの際に、昔から黒い魚体の個体が釣れることが知られ、「クロマス」などと呼ばれていた。食味がやや劣ることからクロマスは釣れても放流されることが多かったという。
なおヒメマスの産卵場所は浅瀬であり、産卵時期もクロマス(クニマス)とは異なる。


ヒメマスが美味しいのは当然だった

ヒメマスはじつはベニザケとまったく同一の魚。湖にとどまったものをヒメマス、海に降ったものをベニザケと呼ぶ。遺伝子が同じなので、あの美味しいベニジャケと同じ肉質なわけだからヒメマスが美味いのも当然というわけ。
このベニザケの陸風型であるヒメマスは、もともとは北海道のチミケップ湖原産。明治時代以降、養殖技術が確立され全国各地に放流されている。


本栖湖と琵琶湖ではダメだったのに

西湖のクニマスは田沢湖から持ち込まれた卵から孵化した子孫。本栖湖と琵琶湖にも同時期に放流されたが、結果として定着したのは西湖だけだった。

クニマスは古氷期ベニザケの子孫?

ヒメマスは現生のベニザケが陸封された魚だが、クニマスは今より海水温が低かった氷期に生きた古代ベニザケの陸封型ではないかと、下のパネルでは解説されている。

クニマス展示館

西湖コウモリ穴の施設内にある。入館無料。



 

西湖の形態と構造

成因と水深

9世紀までの度重なる富士山噴火(貞観噴火)によって流れ出した膨大な溶岩流によって、古代湖である剗の海(せのうみ)が三つに分断され、本栖湖、精進湖、西湖となった。そういった意味では西湖は火山活動による堰き止め湖といえる。
水深は70mもある。

西湖の地形

ジオラマ

写真の左下側がスコリア溶岩流が流れ込んだ平坦な地形。

空撮1

西湖の南西側の紅葉台から。上のジオラマとほぼ同じアングル。


空撮2

このアングルでは、左側から溶岩流が流れ込んで湖を埋め立てた様子がよく分かる。


流入水路

ヒメマスの養殖施設

かつてヒメマスの養殖施設があった。

根場

西湖の西部にあり、主要な流入水路。


冠水と流出水路

河口湖との境界

過去には大雨による増水で湖周道路がすべて冠水したこともあるが、現在は流出水路が人工的に設けられている。下は河口湖側の地形。道路はトンネルで結ばれている。

流出水路と西湖発電所

コンクリートの人工水路の先はトンネル道水路。



 

西湖の景観・景物

逆さ富士の構図

写真家のあいだでは逆さ富士の構図が有名。

西湖コウモリ穴


秋の西湖(2016年)






 

西湖のレジャー

紅葉台の展望台



世界遺産だが釣り場としても健在

釣り料金

2013年には世界遺産の構成資産として登録された西湖だが、現在でもヒメマス、ワカサギ、へらぶなの釣り場として現役である。(2024年5月)

釣りに関する案内と釣り人

2016年。




 

マップ

Googleマップ

マークした場所は観光駐車場。