水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

対馬の島池さんぽ(長崎県対馬)

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対馬の地理と地形

対馬(つしま)は日本海に浮かぶ離島で、日本本土より韓国の方が近い。
戦時中に日本軍が島の中央部を開削して船が通行できるようにしたので北の島と南の島の二つの大きな島に分離しているが、これをひとつの島と見た場合、佐渡島、奄美大島に次ぐ面積で淡路島より大きい。また本島以外に100もの小島を従えている。

対馬を守る「池の神」

古来からの島の守り神は「池の神」。
1500年代に島を支配した宗氏の守護神でもあり、居城は「池の城」とも「池の屋形」とも呼ばれた。男池、女池(大池)という池があったというが現在は繁華街の一角になり池はないが池神社が立つ。

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島の9割が山地

天然の池はわずか。あとは、ダム湖と谷池が占める

島のほとんどを山が占め、最高峰は700m級。北部は開発されていない原生林の山が広がりツシマヤマネコの生息地にもなっている。
南部には高い山はないが、対馬の山の代名詞ともいえる霊峰・白嶽(550m)がある。
これだけ山がちな島であれば、ひとつぐらいは堰き止め湖があってもよさそうだが、山中に天然湖と呼べそうな池を見つけることはできなかった。
一方、人造湖としては山間部に四基の県営多目的ダムが。

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目保呂ダムでは、在来種の対州馬とパワーシュート式魚道が見どころ

星池

天然の池といえそうなものとして唯一、星池という池があるが、対馬では隕石が落ちてできた池と信じられており、成因に検討の余地が残る。

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河川の多くが枯れ沢に

枯れ沢となる川が多い対馬にあって、唯一、豊かな清流をもつ佐須川は、対馬唯一のヤマメ生息地とされている。
そんな佐須川でも中流域において伏流水となり枯れ沢に近い状態になる。
島内の多くの沢でアブラハヤを確認。ほか、汽水の池ではハゼのような5センチほどの魚も現認したが正体は特定できなかった。
北対馬の目保呂ダムではアユ遡上のための特殊な魚道も設けられている。同ダムにはブラックバスなどの外来魚もいるとの情報もあるが確認はできなかった。

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佐須川


 

溜め池は複数あるも、里池は一つだけ

「溜め池」と現地に案内板のあった池は3つほど確認しているが、令和のため池法によってデータベースに登録されている対馬のため池はたった1つ。津和溜池という上対馬の池のみであった。里池らしい表情を持っている池もそれが唯一だった。
谷池タイプのものとしては、あそうベイパーク 自然観察の池も里池らしい雰囲気があるが、すでに溜め池としての現役は退いている。

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津和溜池(左)とあそうベイパークの池(右)

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海の一部を区切った池が多い

リアス式海岸をもつ対馬には、港湾部などに海の一部を区切ったような池があちこちで見られた。
溜め池と役割が判明しているもののほか、高潮などの際に調整池の役割を持っていそうなものもあったが、用途が判然としない池もあった。

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海と池との間の堤には水門が設置(黒瀬湾の池(仮称))

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上水道水源用の小規模ダム

対馬では上水道と農業用水の水源として砂防堰堤タイプの小型コンクリートダムによる貯水池が、集落の近くなどに設けられているケースがしばしば見られた。
対馬市水道部の管理下にあるものもあり、県では「水源かん養ミニダム」と呼んでいる。

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庭園池と公園池

対馬の庭園池といえば、国の名勝にもなっている旧金石城の心字池。町はずれにあり入場は有料。
公園池としては上対馬に上対馬総合運動公園の池がある。汽水でカニやハゼを確認。

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特殊な池も

下対馬の佐須川沿いに1973年に閉山した対州鉱山跡があり、その敷地内に採掘跡湖鉱滓ダムと思われる池がある。
なお対馬の河川の特徴として、多くの流れが中流部で枯れ沢となる。対馬随一の清流をもつ佐須川も対州鉱山跡あたりでは流れは細く、枯れ沢状となっていた。

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地下ダム

対馬の川は枯れ沢が多いとは思っていたが、島内には志土路地下ダムと和板地下ダム(長崎県の資料には「和板ダム」と記載)の二基の地下ダムがある。
これら地下ダムにはまだ行っていないので、地下ダムの事例として宮古島の福里地下ダムを下に。

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対馬の池で見かける不思議な工作物

池岸によく置かれている。
岩盤むきだしの岸に置かれていることが多い。これの正体は「蜂洞(はちどう)」と呼ばれるニホンミツバチの集蜜ボックス。
対馬は日本で唯一、セイヨウミツバチがいない純血のニホンミツバチの生息地。

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円筒形の木製の筒。頭には重石。


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名前が書いてあったりするけど、もしかしてお墓!? と最初は思ってしまった


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筒の下部に五角形の口のようなものが共通している



 

韓国が見える

そんな立地から歴史的に朝鮮半島、近年では韓国との交流が深く、島のレンタカー客の99%は韓国人観光客だったという。島内の標識や案内も日本語とハングル語の併記がデフォルト。

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海の向こうに韓国の町なみが見える


 

規制看板

釣り禁止ばかりの壱岐とちがって、対馬は全体的にゆるい
感じがいい。
「釣り禁止」なる看板はほとんど見あたらず、島では大型のダムにあった立入禁止の看板が立っていた程度。共通看板というわけではないが、同一のイラストが採用されていた。

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小浦ダム(左)と鶏知ダム(右)にあった看板


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仁田ダムで見つけた立入禁止看板。手塚タッチを思わせる男前な看板だが、倒れているのが残念


 

釣り事情

ホームセンターや酒屋にも釣り具が充実しているという島の土地柄。ただ海釣り主体。池のフナや鯉釣り、渓流釣りの道具はあまり見あたらない。

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掲載している対馬の湖沼

県営の四ダム

  • 目保呂ダム(長崎県対馬)対馬最大の河川を堰く。馬事公園あり。
  • 鶏知ダム(長崎県対馬)重力式コンクリートダム。
  • 小浦ダム(長崎県対馬)平成の重力式コンクリートダム。
  • 仁田ダム(長崎県対馬)公営のミニゴルフ場が隣接。

小規模生活ダム(水源かん養ミニダム)

  • 鳴川ダム(長崎県対馬)
  • 山井手ダム(長崎県対馬)
  • 豊水源ダム(長崎県対馬)
  • ナムロダム(長崎県対馬)

ため池と海チカの池

  • 津和溜池(長崎県対馬)対馬唯一の里池
  • 長板浦の溜池(仮称)(長崎県対馬)シオアメンボが生息。
  • 志賀ノ鼻台場池(仮称)(長崎県対馬)

その他の池

  • 対州鉱山の池(仮称)(長崎県対馬)
  • 上対馬総合運動公園の池(長崎県対馬)


 

対馬の島池さんぽマップ

2021年9月 ver.1.11

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Google マップ