水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

蛇の池(山口県平郡島)

【じゃのいけ】

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あまりに神秘な地形に抱かれた平郡島「蛇の池」

 

全国の島池でも屈指のラスボス感。

島池を多く旅してきた。無限に見えた全国各地の島池も、ここに至っておおよそ先が見えてきた。充足と同時にさびしさもある。
平郡島の蛇の池は、いまだ未訪のものとしては残り五指に入るであろうボスキャラ的な池だっただけに、背筋が伸びるというか、襟を正すような思いでのぞんだ。
渡船の便数が少ないことや、地図や情報では徒歩しかアプローチ方法がなさそうなので、この池には一日かけてのぞむことにした。
とにかく強力な気を放つ池だった。名からして察しがつくことではあるが、現地に立てば、さすが、という畏怖に打たれる。
これだけ海チカなのに汽水ではなく真水(淡水)を保っているというのも不思議だ。類似の事例としては、日本最強クラスの池オーラを放つ西伊豆の大瀬神池をほうふつさせる。

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祭りも率いる島の神スポット。

蛇の池のある海岸沿い500mほどのところに、海に向けて真っ赤な社殿を差し出す赤石神社がある。
以下、柳井商工会議所のHPから抜粋。

蛇の化身の美女が、対岸の室津半島(熊毛半島)の南東端部にある池の浦をのがれて、主となったといわれている「蛇の池」は、柳井市平郡島の西の端にある300アールほどの真水の池です。
「滴じゃというても粗末にゃならぬ ここは蛇の池 神の水」と歌われ、かつては舟の飲み水でもありました。
老松の並木に沖の白帆が見えかくれし、そばの赤石祭りには数百隻の参拝舟でにぎわい、この日だけはこの鏡水で水浴が許されたといいます。
柳井いろはかるたにも、「そこは蛇の池 神の水」と詠まれています。

島の案内板には、「源平のころの伝説を残す池」「その後、娘が身をひそめた平郡の池は、「蛇の池」と呼ばれて崇められ、釘一本、落とすことも禁じられ、大切に守られています。」と記されていた。
生息魚類の釣査でルアーを投げてみようかと思ったが、何となくやめておいて正解だった。
「釘一本、落とすな」というところに既視感。鉄を嫌う池のヌシってどこかにいたなあ。うーん、どこだったか・・。


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伝説に出てくる対岸側の室津半島・池の浦(右端・左に目を移すと長島、祝島が見える)


 

いざ、平郡島・蛇の池へ

柳井港から渡船に乗船

柳井港8:30発→平郡西10:10着。帰路は14:40。
池まで往復7kmほどか。1時間の船旅。

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船から見た平郡島と蛇の池

蛇の池は地形も地形なので海上からでも、すさまじいオーラで場所がすぐにそれと知れる。
いやはや、これは会うのが怖いぐらい。ただ電柱が立っているのが、ちょっと残念というか、ほっとしたというか。

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平郡島の西港に上陸

西の港を経由して東の港まで船は行く。蛇の池は西の港で下りる。

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西平郡の集落

じつに静かでのんびんり。食堂も売店もない。店は一軒あるそうだが、カップラーメンぐらいしか置いていないと言われた。自販機の缶コーヒーで飢えをしのぐ。

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北岸に出る峠越え

島に上陸してからは徒歩。港は南岸側なので、まず峠を越えて北岸側まで歩く。

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赤石神社まで海岸沿いに

赤石神社の横にも不思議な池がある。

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蛇の池に到着

赤石神社からは道幅はさらに狭くなるものの500mほど歩くと少し広くなって終点。お堂のような建物がある蛇の池に到着。
じつにみごとな池。海チカなのに淡水を保っている不思議。

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対岸にも小屋。道もあった。

池はお堂から一望することができるが、対岸側にあるもうひとつの小屋が見える。
東岸側に対岸まで行けそうな小径がのびていた。入ってみよう。

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左が湖周路の入口。すぐ小さな橋があり、石積みも見られた。池の吐き出し部だろうか。


 

護岸は意外なことに・・

東岸側

東岸の半周はコンクリートで固められており、管理道を兼ねている。
コンクリート護岸の下には西瓜ほどの石で護岸された痕跡が水没していた。

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コンクリートで固められている。
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西岸側

西岸側には道はなく、木々のオーバーハングと水生植物が岸を埋める。
が、よく見ると丸石積みの護岸が垣間見えた。
天然の池ではあるが、昔からかなり人の手が入っている。

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対岸のバックウォーター側(池の南東側)

対岸の小屋のところで径は終わった。
この建物はポンプ小屋のようで、壁から突き出た配管が水中にもぐりこんでいる。

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ポンプ小屋

通常の溜め池のポンプ小屋よりも大きい。周辺に畑はないし、どこに水を送るのか?

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流れ込み側にコンクリート開渠とバルブ??

山側からはコンクリート水路が池に注ぎこむ。簡易的な橋が渡されている。
廃棄された鉄製のバルブのようなものもあるが、その先は土の斜面。
このバルブ、何のために? 流れ込み側になぜ? 深いところから汲み上げて、このバルブから放流? でも何のために?

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池岸に立つ電柱

ミステリアスな池であるが、池岸に電柱が立つ。ポンプ施設の電源確保のためであろう。

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対岸からの景観

対岸のお堂。その横に垣間見えるのは、タンカーの艦橋。ここが海チカの池であることの証。

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池で確認した生物

亀は警戒心が強く、なかなか撮影できなかった。あきらめかけたころ、目の前に二尾がぽっかり浮いてきてくれた。が、写真を後で確認してみると、どうも外来種のアカミミガメのようだ。
沖目で巨大魚がボイル。波紋だけ写真に。そして対岸のポンプ小屋周辺には、なぜかたくさんの蛇の抜け殻。しかもでかい。

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なぜ海水が混じらないのか

海とは水の色がまったく異なる。
水面高は数メートルほど池の方が高そうで、海側は道を兼ねたコンクリートの防潮堤で護岸されている。このコンクリートの守りがなければ、自然の砂嘴だけでこの水面高を保てるのだろうか。
堤の幅は20mほどしかない。比較として、西伊豆の明神池でも40mはあったし、高潮による海水の混入を防ぐ樹林帯も小さい。海にこれほど肉薄した真水の池は他に知らない。

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案内資料

蛇の池は島の観光案内には必ず出てくる。
以下は船着場にあった案内板、資料から。

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蛇の池の案内
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Googleマップ

マークした場所は池の対岸に行く道の入口。