水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

おのころ池(宮崎県高千穂)

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高千穂峡の池さんぽ(ver1.11下書)2022

天孫降臨・・日本創世の名をもつ池

おのころ池は、宮崎の絶景峡谷・高千穂峡の崖上にある公園池ふうの池であるが、私がその存在を知ったのは「大正の広重」こと、近代の鳥瞰図クリエイター・吉田初三郎画伯の観光絵図集を眺めていたときだった。
神話の地として古くから名所となっていた高千穂の絵図の中に、切り立った崖の中腹に複数の池が描かれていて、なんだこれはと色めきたった。

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吉田初三郎「高千穂名所図絵」1924 部分抜粋

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吉田初三郎の観光絵図。中央右下あたりの滝下に池が見える


 

池にオミコシが突入する「浜下り」神事

絵図では背後の崖から幾重にも滝が吹き出し「忍穂井」と書かれた大きな池があり、道がその真ん中を突っ切っている。その左手の崖には三本の滝とともに「七ツ池」が描かれている。いったい、どんな池なんだろう。
何年もたって訪問がかなった。池は「おのころ池」という名で現存していた。絵図と同じく、池の水面を割って石祠をのせた小島が浮かんでいる。
じつはこの池、アマテラス大神とスサノオノミコトのいわばスティグマたる「日の影」「月の影」が岸に刻まれ(日の影は現在は消失)、二人の両親でもある始祖神イザナギ、イザナミが最初に作った「おのごろ島」を池の中に体現していたりして、じつにそうそうたる神話スターの舞台装置、デウス・エクス・マキナだったのである。
池の中の島は、おのころ島。かつては神社が鎮座していたとか。現在も池では毎年、4月の例大祭のおりには「浜下り」といって地元の氏子にかつがれた神輿が池の中に入り、おのころ島を三周する神事が行われている。
初三郎の絵図にあった「忍穂井」は「おしほい」と読み、やはり神様関係の水場を指す言葉のようだ。おのころ池ではなく、なぜ忍穂井としたのかは分からない。
「月影」「日影」が池を見おろす垂直の懸崖に描かれている。初三郎の時代には「日影」の方はすでに崩れて消失していたはずだけど。

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もうひとつの、おのころ島

国産みの神話に出てくる「おのころ島」は、イザナギノミコトとイザナミノミコトが「天沼矛(あめのぬぼこ)」という神剣の先から生み出された島で、日本列島はこの島から生まれる。おのころ島とされる島は、淡路島の東側に現存しており、その名はズバリ「沼島(ぬしま)」である。この島には「おのころ公園」という公園がある。
沼島を見据える淡路島側には、ズバリ同名の「おのころ池」という公園池があったりするが、名前だけ借りたような印象を受ける。

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神聖なミソギの池に、なぜかチョウザメ

池のまわりには茶屋など数軒が立っていて、霊験あらたかな雰囲気より物見遊山的な気やすさが優っているだろうか。かたわらにはニジマスの釣り池があったりして、ちょっと驚く。ふつう寺社池であれば殺生戒がしかれるが、国産み神話というあまりにビッグスケールな池ゆえか、放流された北米原産の魚を相手に釣りができるなんて、なんとも大らかそのもの。
さらに目をひいたのは、錦鯉にまじって池で悠々と泳ぐ巨大なサメのような魚。ベステルとシロチョウザメの二種。ベステルは食用、飼育用に交配されたハイブリット種で、刺身としても美味でキャビアも良質とか。
うーん。国産み神話の池に高級食材の外来魚なんて、もうここまで来ると大らかすぎて、すごいとしか言いようがない。

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池では二種類の大きなチョウザメが泳ぐ
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鼻が丸い左がシロチョウザメ、右の鼻がとんがっているのがベステル



 

水の流入口と釣り池

道をはさんだところにある御塩井水源池から水を木樋で導水しているように見えた。池の周囲には売店や、通水する釣り池もある。
下写真の左側にある木樋が流入口か。

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高千穂神社から池までのアクセス

河岸段丘上にある高千穂神社から、九十九折りの車道を下っていく。

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段丘上から見た高千穂峡
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高千穂峡

国の天然記念物に指定。断崖から落ちる滝をボートから見上げることができる。

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池さんぽマップ

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高千穂峡の池さんぽ(ver1.1 下書)2022

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Googleマップ

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