水辺遍路

実際に行った池やダム 9,650ヶ所を掲載

円井池(山梨県韮崎)

【つぶらいいけ / 円池】

f:id:cippillo:20210902101125j:plain
何ともいえぬ独特の霊気。水の色もすごい。

f:id:cippillo:20190930144121j:plain
甘利山の湖沼群(ver.1.2)水辺遍路謹製

秘池の雰囲気が濃厚な霊池

周辺の山腹は、拙著『日本全国 池さんぽ』にも掲載した赤牛伝説の椹池(さわらいけ)・大笹池をはじめ、イケンテーラ、タカンタといった不思議な名と立地の山池たちがぽつりぽつりと点在。
それらに負けぬほど、ここ円井池も刺激的だった。現地の案内板では、「円池(つぶらいけ)」「円井(つぶらい)」という表記も。
「円井」は現在も円野町、円井といった地名として使われている。「井」という言葉は池に近い意味もあるので、山中にひっそり埋もれたこの小さな池の名が地域名の語源になっている点で、ローカルメジャーな霊池だったことは間違いない。

f:id:cippillo:20210902101111j:plain


 

片目の魚と姫の池伝説

下野した皇女と池

仁徳天皇陵と並ぶ前方後円墳に祀られている反正天王。その皇女・円井姫(つぶらいひめ)が登場する池伝説は少々、荒っぽい。
この地に住みつき、機織りなどの京文化を伝えた姫は、散策中に見つけた池に魚を放って大切に育てていたという。しかし大きくなった魚を獲ろうとした漁夫たちと乱闘になって、宮中から伝わる秘儀(?)で男どもを撃退するも、片目を失明。うーん、皇女にそんなケガを負わせるとは、どんな地元民・・。パラリンピック開催中に、ちょうどすべてを捨てて愛の道を進まんと新天地へと赴く皇女のニュースが新聞一面をにぎわせていて、千五百年前の池伝説が身にしみる。
その後、この池には片目の魚ばかりが棲むようになったという伝説も。実際には魚が棲めそうな環境ではなさそうだが、片目の魚が登場する池伝説は、兵庫県の昆陽池をはじめ、全国で五つほど確認している。

bunbun.hatenablog.com
f:id:cippillo:20210902101252j:plain


姫の霊を慰めるため、毎年、10月24日に鎮火祭(火伏せ祭り)が行われていたというが、現在はどうであろうか。
この祭祀については龍蛇伝説を専門に採りあげた龍鱗ウェブサイトにおいて興味深い考察がなされていた。以下、引用。

(円井池の10月24日の祭りでは)「逆杭を打ち、ヌルデの木で三爐をつくり」とある。どちらも池のヌシの竜蛇が嫌うとされるもので、その効力で竜蛇を立ち退かせる場合もあれば、それにより「蛇抜け」しようとする竜蛇をそこから出さない、ということもある。そういう呪物だ。
ここではそれが火伏の祭祀であった、という。水神格の竜蛇が抜けてしまうと、里に火の害が蔓延する、という話は多い。してみると、これは円井池の竜蛇を抜け出させないようにする、という祭祀であったのではないか。円姫の伝説にはそういった要注目の要素がある。
龍鱗「円井池」

 

円井池へのアクセス

まずは竜珠院をめざす。竜珠院を通り過ぎて左手に少し広めの駐車スペースがある。ここから林道。クルマでも通れないことはなさそうだが、歩いた。10分ほどで着いたが、現場以外に「円井池」を案内する道標はないので、分岐など少し注意が必要。

竜珠院まで

山斜面にある集落を抜けるかなり狭い坂道だが舗装はしてある。
荒倉山登山道へと導く看板に従って進む。ここに円井池の文字はない。

f:id:cippillo:20210902101215j:plainf:id:cippillo:20210902101207j:plain

竜珠院と登山者用駐車場

竜珠院本殿へのヘアピンカーブで直進すると、すぐに駐車スペースがある。

f:id:cippillo:20210902101224j:plainf:id:cippillo:20210902101313j:plain

作業道を歩く

作業林道のような道を歩くと、ほどなく分岐。荒倉山ではない方の道(右)へと進む。
右の道の案内がないが、よく見ると熊に注意看板の下に落ちている。裏返してみなかったが、おそらく「円池」と記されているのだろう。

f:id:cippillo:20210902101341j:plain

もう1回分岐

作業道を登っていくと、また分岐。これも案内はないが右へ。
よく見ると、ここでも円井池への案内道標が道ばたに落ちていた。(右写真)

f:id:cippillo:20210902101302j:plainf:id:cippillo:20210902101233j:plain
f:id:cippillo:20210902101332j:plain

池に到着

10分ほどで到着。行程は斜度はそこそこだが風の通りが悪く、けっこう汗をかいた。

f:id:cippillo:20210902101243j:plain


 

池の地形と構造

f:id:cippillo:20190225122951p:plain

二つの山の鞍部。円井逆断層も。

国土地理院の地形図に池は記載されていないが、Googleマップには池としての記載がある。
位置をもとに精査すると、背後に標高755mの三角点のある山峰からのびた尾根。前には標高640mの小峰。その二つにはさまれた標高610mあたりの鞍部に水がたまった状態。
600mほど北にも、もうひとつ水たまり状の池がある。

f:id:cippillo:20210902101154j:plain
岸には明瞭な喫水線が見られない。水生植物群落もなく、雨後出現池の形態をとっている可能性も。雨量や季節によって水位が柔軟に上下し、最大で写真の状態より50cmほど深くなるようだ。このとき、池はひとまわり大きくなる。

雨後出現池に似た池相か

近くには円井逆断層もあり、褶曲が池の生成に関係した可能性なども見てみたいところだが、池は完全に樹林に囲まれ、航空写真や空撮で池の姿を捉えることは難しい。
流入路、流出路は目視では見あたらない。
池はなだらかなスリバチ地形にあるが、人工池でいうところの堤部は下の写真のような感じ。
水位の年間変化などもう少しデータがほしい。

f:id:cippillo:20210902101323j:plain
f:id:cippillo:20210902101139j:plain


 

Googleマップ