水辺遍路

訪れた池やダム 1万スポット

豊似湖(北海道えりも)

【とよにこ。馬蹄湖】

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ハートの湖形を楽しめるヘリコプターの遊覧飛行もある

じつはカタチよりおもしろい池の成因

原生林に囲まれた周囲1km、最深18mの天然湖。ウィキペディアなどに日高山脈襟裳国定公園内で唯一の天然湖という記述が見られるが、海岸部に悲恋沼をはじめとした海跡湖と思われる天然湖沼群があるので、どうであろうか。
成因は氷河湖
氷河が削り出した土砂が氷河末端に堆積し(モレーン)、その後、氷河の消失によって堰き止め部だけが残って沢を堰いてできるタイプの池で、日本アルプスの山上湖沼群などに見られるが、このような標高の低いなだらかな地形での氷河湖というのは、正直、驚いた。

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氷河湖の図解。拙著『日本全国 池さんぽ』(三才ブックス)より

地形的にもきわめて特異な池である。インレット部が広い二つのワンドで、吐き出し側に向かって一点にすぼまっている。ふつうの池なら、すぼまった流れ込みから末広がりに吐き出しに向かうのに、ここでは逆。
モレーンによる堰き止め部は明瞭ではないが、氷河の強大な圧力によって運ばれた岩が吐き出し側に積み上がっている様子は湖岸に立つとよく分かる。
その形状から「ハートレイク」「馬蹄湖」とも呼ばれ、北海道銘菓「白い恋人」のCMで湖の姿が放映され知られるようになった。白い恋人といえば拙著『日本全国 池さんぽ』でも採り上げたオタトマリ沼も、白い恋人のパッケージデザインで有名になった。菓子メーカーが有名にした二つ目の池といえよう。


 

アイヌ語の「トヨニ 」の意味は?

「豊似」という名は近くの山名、川名にも見られる。アイヌ語のオリジナル湖名は「トヨニ トー」。林道名は「庶野の沼沢」なので「庶野(しょや)の沼」という呼び方もあるのかもしれない。
トヨニは「土・ある・所」という意で、トヨニ川は泥の流出の多い川。豊似湖は泥というよりは岩石に囲まれた湖の印象なので、川名、山名に引きずられたかっこうだろう。
江戸時代に拓かれたという猿留山道(さるるさんどう)が池の近くを通っているし、沼見峠という場所もあるから、遅くとも江戸時代には池の存在は認知されていたはずだ。
ここを通った測量のプロ伊能忠敬をもってしても、馬蹄には見えてもハートの形という認識はなかっただろうが、現代ではハートとなると大人気である。三重県のかさらぎ池もハートの形で恋人の聖地ということになっている。かさらぎ池は展望台からハート感を得られるが、豊似湖は苦労して湖畔に立ってもハートは感じられない。根性で沼見峠まで行軍すれば眼下に池を見下ろせるが、ここからだとハートというにはちょっと苦しい。真のハートを体感したいのであれば夏期に運行されているヘリコプター遊覧飛行を利用するしかないだろう。
クルマと徒歩で湖畔まで行くことが可能だがアプローチは少し気合がいる。

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アプローチ路の看板(左)、駐車場(中)、遊歩道(右2枚)


国道から日高目黒の集落の分岐に入り、猿留川沿いに舗装路を進む。やがて「白い恋人の湖 7.9km」という立派な看板が出てくる。国定公園の天然湖沼をやや私物化している感がなくもないが、道が間違っていないことを確認できるのはありがたい。看板から少し行くと未舗装区間がはじまる。
ダートは6.2km。庶野沼の沢林道を進み、最後の2kmほどは山深くなる。ふと道ばたで、おいでおいでをするような無気味な動きが見えて背筋がゾクッとした。
かたわらを通るとき、ガラスごしに目をやるとキツネが横たわっていた。シッポだけを宙に立て、妖しくゆらりゆらりと動かしていたのが「おいでおいで」に見えた。瀕死なのか、何をしているのか。無気味すぎて目をそらした。
まもなくどん詰まりになり数台分の駐車スペースと、けっこうちゃんとしたトイレがあった。
あとは軽い上り下りのある山道を歩くこと200mほどで、岩がごろごろした湖畔に出ることができた。
エゾナキウサギ生息地。湖はニホンザリガニ生息地。アメマス、ワカサギ、トゲウオといった魚類も棲んでいるようだが、訪れた際は魚の気配はなく、ルアーへの反応もなかった。
およそ600mの遊歩道で一周することもできる。
帰路、あのキツネが死んでいたらどうしようと思ってビビっていたが、姿はどこにもなかった。キツネが人を化かすというが、なるほど、あの不思議なゆらゆらは、いったい何のための行動だったのだろう。

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駐車場に設置された案内板
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モレーンの岩屑といえば、そう見える吐き出し側
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インレット側はビーチ状になっている


 
マークした場所はアプローチ遊歩道入口の駐車場(トイレあり)

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