怖すぎる名前の、アプローチ困難な池
「呪池」・・大切な溜め池にそんな名前を付けるはずがない。もしどうしてもそうしなければならないとしたら、いったいどんな事情だったのだろう。
この池に惹きつけられたのは、Googleマップ上で「呪池」の名を持つ池を見つけたからだった。しかし、この池へのアプローチは容易ではなかった。空撮をしようにもなぜか電波障害でいつもうまくいかない。
実際に現地に行ったことのあるTYSさんから当ブログに寄せていただいたコメントにも助けられながら調査を継続してきたが、溜め池の公式なデータベースが整備された2023年現在では、この池の登録名は「桃の井沢池」であることが分かった。Googleマップでもそのように訂正されている。しかし一方で、現地の古老に聞き取りを行なったTYSさんによると「桃の井沢池」も「呪池」も現地では使われていない名だったとの報告も。また現地にある竣工記念の石碑に気になる池名らしき文字も刻まれているらしい。
- 怖すぎる名前の、アプローチ困難な池
- 2023年3月の調査
- 2017年の調査
- 初回アタックはオートバイで
- 空撮画像から確認できる池の形態
- 怖い名前の池
- 池の記念碑と判読困難の文字列「‥内區堰‥明治33年建立‥」
- Googleマップ
2023年3月の調査
荒木根ダム側からアプローチ路があるのではないかと林道を探索したが道を見つけることはできなかった。
空撮を試みたが、電波状況がきわめて悪く姿を捉えるのがやっとで肉薄はできなかった。池はかなり土砂堆積が進行しているようである。
2017年の調査
あまりにもストレートに怖ろしい名をもつこの池は、バスポンドとして有名だった荒木根ダム(※現在は釣り禁止)の隣の沢筋にある兄弟のような池である。
どんな山奥の池でも、ため池であれば管理上の必要性から堰体までのアプローチ路は必ず存在するはず。呪池の場合は立地的に兄弟的な荒木根ダムの完成によって、ため池としての必要性がなくなり、管理ルートも廃道化した可能性も否めない。ただ空撮写真の状況からも継続的に堤の管理はなされているようだ。堰体上には軽トラックが通ったような踏み跡も確認できる。
下の写真、よく見ると、くびれた堰体横のワンドに繋留されたボートも見える。
初回アタックはオートバイで
初回のアタックでは荒木根ダムのインレットからのびる未舗装林道をオートバイでゆっくり走り、直線距離で350mまで近づいたものの、最終的なアプローチ路は見いだせず。
あきらめず、今度は呪池の北側の林道からのアプローチを試みた。地図上ではアプローチ路も記載されているものの、いざ現場に入ると下の写真のような道。
道を間違ってさえいなければ200mも走れば池に着くはずなのだが、蜘蛛の巣と伸び放題の木々の枝に塞がれ、あえなく撤収。
池から西にわずか1.5kmのところには道の駅もあるような場所ではあるが、空から引いて俯瞰してみても、明らかなアプローチルートというものは把握できなかった。
空撮画像から確認できる池の形態
インレット側に血のしずくのような真っ赤な紅葉がぽつぽつ。水の色はみごとな房総マディー。折れ曲がったような屈曲した堰体もめずらしい。堰体下の谷は木の高さから見て、そこそこの深くえぐれている。とすれば池の方も土砂が溜まっていなければ、地形的に深さがあると見てよさそうだ。
池から二方向に触手のように腕がのび、空から見ているだけでも、ある種の凄味を感じてしまうのは、名前のせいだろうか。
怖い名前の池
苦労して切り拓き、継続的に管理しなければならない農業用ため池に「呪池」なんて怖い名前を付ける事例には記憶の限り出会ったことがない。もし誤記でないとしたら、よほどの事情が?
怖い名前の池としては、北海道帯広にチヨマトー沼(アイヌ語で「悪魔の棲む沼」の意)という池がある。
池の記念碑と判読困難の文字列「‥内區堰‥明治33年建立‥」
2019年に実踏調査してコメント欄にレポートを寄せてくれたTYSさんによると池には記念碑があり、「‥内區堰‥明治33年建立‥」と読み取れたとの貴重な報告をいただいた。
「區」の字は「区」の旧字で、境、区切りという意。「内」という字は前に地名があって、それに続く文字の可能性もあり、「區池」と考えれば「呪池」と読み間違えてもおかしくはない。
Googleマップ