蛇体化した姫の終末の池
高さ200mの外輪壁が標高1,800mの天空庭園を囲い込み、空にのみ開かれた独特の隔絶感が、この世ならぬ空間を現出している。この異様な世界は黒姫山頂上の火口原。椀を伏せたような重量感のある山の頂に、こんな花園が隠されていたのである。
そして山名の黒姫。ブラックなプリンセスというわけではなく、戦国時代、山麓の中野城主・高梨氏の娘の名が「黒姫」ということである。それにしても当時は女の子に「黒」と名付ける習慣があったのだろうか。あまり聞いたことがない。
女体蛇体変化伝説から後付けされた名なのかなとも思う。
蛇体化した美女といえばギリシア神話のエキドナも。「マムシ女」という意味。像はイタリアの怪物公園。(写真はウィキメディアより)
黒姫の伝説は、志賀高原、草津白根山の池にも
中野をはさんで東側にある志賀高原の大沼池や四十八池に伝わる黒姫伝説は、ここ黒姫山の伝説と共通要素をもつバリエーションといえる。
ストーリー前半部分は共通し、大きく異なるのは結末部。
まんが日本むかし話で黒姫伝説をおさらいしよう。
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伝説結末のバリエーション
上記の昔話では黒竜の怒りが四十八池を決壊させ城下町は壊滅状態に。姫は黒竜といっしょに黒姫山の頂上の池に移るということになっている。
異説では、大蛇を欺いた呪いによって皮膚が鱗に変じる異変に直面した姫が、人界を捨てて乳母のお種とともにこの山に登る。
山頂で姫の捨てた化粧道具が七ツ池となり、姫は大池に身を投げる。それを見届けた乳母のお種さんが身を投げたのが種池。救いのない悲しい話である。
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池の景観と特徴
ワタスゲの湿原が取り囲む
湛水面の周囲長は200mほどだが、取り囲む湿原を含めれば500mほどあり、標高1,800mとは思えない広がりを感じさせる。
七ツ池湿原とつながっていれば、広大な天空庭園になっていたと思うが、間に樹林帯がはさまっている。
横の山は小黒姫
池横のぽっこりしたお碗のような山が山頂かと思いきや、これは小黒姫というナンバーツー。黒姫山の最高峰はじつは外輪山の一角にある。
堰き止め構造?
小黒姫側からか南外輪山側からのいずれかの山体が流れて堰き止めているようにも見える。ただし七ツ池湿原側への流出痕は確認できなかった。
流れ込み側
池の流れ込みは西側湿原に明瞭で、その奥は大岩が連なる谷部となっている。
浮き島
湿原の一部が浮き島状になっていた。
岸から完全に分離したもの、半分つながっているものもあった。
岩の露頭
水面から岩が顔を出しているところもあった。右は半水没のワタスゲ。
池頭と池尻
両側からの写真を並べてみた。左が池尻、右が池頭。
アクセスガイド
池さんぽにオススメの登山路
いくつかの登山ルートがあるが、池は黒姫山山頂の外輪山内にあるので、基本的には山頂をめざせばよい。
池めぐりにいいルートは種池、古池といった山麓の池めぐりをしながら登頂できるルート、その名も「古池・種池登山口」。
新道分岐から西新道に入る方が楽で景色もいいが、大だるみにある湿原を見ていこうと思ったので、やや遠まわりに西登山道から峰ノ大池をめざした。この場合、往復で7時間はみておく必要がある。
登山口駐車スペース
古池・種池登山口の駐車スペースは3〜4台と少なく激戦区なので、夜明け前の早朝入りした。平日だったが日の出までには駐車スペースは埋まり、あとから来たクルマはみな引き返して行った。
アプローチ路は二車線。
帰路は西新道がおすすめ
西新道は尾根伝いで景観もよく歩きやすいので、帰りのルートとして最適だった。
標高2,000m地点に峰ノ大池に下る道と、山頂に向かう道の分岐がある。
GPSデータ
やや遠まりで池めぐりコースを設定した結果、登山口から峰ノ大池まで3時間半かかった。
距離は9.2kmと長いが急登は少なかった。獲得標高は750mなので厳しい登山というわけではない。途中、岩場で迷いやすい場所もあった。リボンを見失わないよう進みたい。
拠点としては、道の駅やキャンプ場も充実
古池・種池登山口の駐車場キャパシティは小さいが、すぐ西にも登山口があるほか、2kmほどのところに戸隠キャンプ場や、高妻山登山口の大駐車場もある。