【ゆいのいけ】
隠岐島後の西横綱
隠岐の島後島の湖沼では、西の横綱的存在の天然湖。
島の反対側にある東横綱・津井の池と立地的にもネーミングも対照的であり、どちらも海チカの池であるが、形態や成因は大きく異なる。
静の津井の池に対し、動の油井の池といおうか。
海岸段丘に担ぎあげられた高台にありながら、池塘を象嵌した巨大な浮き島をたくわえつつ、大規模土砂崩落の断崖を侍らせた姿は島池の王者の風格さえ漂う。
島根ジオサイト100選。
ドーナツのような特異な形状
海岸近くながら標高50mにある直径250mの円形の池。
湿原化が進み、洞爺湖のようなドーナツ形に見えるが、中央の島は島後では唯一の浮き島だという。
島で唯一の浮き島
浮き島の中には複数の池塘が見られた。池 in 池といったところ。
じつは深くて、海底に通じている?
湿原化が進んでおり見かけは浅そうだが、じつはけっこう深くて、底にしみこんだ水は地下水脈を通じて海底に湧出している・・そんなふうに案内板に池の構造が図示されていた。確かに流出河川は見あたらない。
この池で溺れると海で死体が上がるという噂は、子どもたちが池に近づかないようにビビらせる作り話ということだが、池の水が地下を通して海底から湧き出しているのなら、まんざらウソでもない。
実際に海と地下で通じている池としては、沖縄県の下地島にある通り池や鍋底池、南大東島の大池などがあるが、いずれも鍾乳洞由来である。静岡県の伊豆半島の天窓洞は波の浸食作用によるものだが、池というよりは洞窟の吹き抜けというべきだろう。伝説上では淡路島の美女池が海とつながっているとされるが確証はない。
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成因には説が多かったが
成因は火山活動による爆裂火口湖とも、地すべりによる頭部陥没湖、なかには隕石の衝突痕であるクレーター湖説も唱えられたようだが、最近になって大規模地すべりによって生まれたくぼみに水がたまったもの、という説が有力となった。ということで、また日本からクレーター湖の可能性のある池がひとつ消えた・・?
地すべり地形
池の上には切り立った断崖が取り囲むように立っている。これを火口壁と捉えた火口湖説がいまだに散見され、近年まで決着がついていなかったことをうかがわせる。
遠景
北側よりのぞむと、連続的につづく断崖は火口壁には見えない。何かのラインに沿ったかのように断崖面が半島の先まで続いている。これほど大規模な崩落の原因はやはり地震だろうか。
港の上にある小高い丘のひとつ向こうの台地の上に、油井の池がある。
水田だった時代も
池が水田として使われていた時代もあった。
といっても1970年ごろの写真では、池の外縁部を水田にしているだけに見える。それでも田植えなどは田舟を使ったそうだ。
駐車場・設備
舗装駐車場、遊歩道、トイレ、展望台あり。
野鳥やトンボの一大生息地ということもあり、観察デッキも設けられている。
アプローチ路は1.5車線。
案内板
古い案内板および標識には「Yui Pond」と記されていたが、新しい案内板には「Yui-no-ike-Pond」とあった。
池の英語表記の難しさ。
天下の芦ノ湖は、Ashi Lakeとは表記されない。Ashinoko Lakeと書く。
Yui PondとYui-no-ike-Pond。さて、どちらが外国人に旅情移入してもらえるか。残念ながら日本人には分からない。
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Googleマップ
マークした場所は駐車場。