水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

ウトロ高原湖沼群(北海道斜里)

ウトロ高原湖沼群は地理院地図に池として記載されているものだけで15を数える

アクセス路皆無。知床最多の湖沼を抱く秘湖群

15ほどの湖沼を有するウトロ高原湖沼群は、その分布域のすべてが「遠音別岳原生自然環境保全地域」に指定されている点で、すでに日本屈指の秘湖感を漂わせている。
というのも「原生自然環境保全地域」は屋久島をはじめ、全国で5ヶ所しか指定されていない。
最大の遠音別湖(仮称)は湖周長1kmもあり、知床では羅臼湖に次ぐ大きさの堂々たる天然湖だ。また、湖周長600mクラスの規模を持ちながら、秋になると完全に水が消えるという幻想的なチャラッセナイ湖(仮称)もある。
どの湖沼もアクセス路は皆無。日本最後の大型秘湖群といえそうだ。

 

ウトロ高原625湖

Googleマップで「雪湖」となっているけど

2023年時点のGoogleマップでは「雪湖」という名でマークアップされているが、どうも根拠不明。
知床湖沼の全容解明を試みた伊藤正博著『知床半島の湖沼』では「遠音別湖」と記載されているが、これは伊藤氏が便宜上、命名したものとのことで正式名称ではない。個人的にはいい名だと思うが、「雪湖」のこともあるので、当ブログでは識別のため標高を付して「ウトロ高原625湖(オンネベツ625湖)」と表記した。

成因と形態

伊藤氏によると遠音別岳の山体崩壊による岩滓なだれが成因。山体崩壊によって300もの湖沼が誕生した裏磐梯湖沼群のような事例もあるが、なるほど規模は違うが両者には地形に類似性がある。

bunbun.hatenablog.com



 

チャラッセナイ485湖

秋になると湖が消えてしまうらしく、伊藤氏の著書には水が完全に抜けた写真が掲載されていた。
地形的にはすり鉢状に山に囲まれており、流出口は見あたらない。そういえば大雪高原湖沼群の「空沼」も大きな沼なのに秋になるときれいに水が抜けてしまい、「カラ」沼という名の由来にもなっている。現地で会った自然センターの人が、池のどこかに穴があいているという話を聞いたことがあると言っていたのを思いだした。


 

地すべりドームの湖沼群(8つ)

遠音別岳の頂上から北西側の滑落崖下に地すべりの移動体がドームのように盛り上がっていたような、おもしろい地形があり、小さな沼がいくつも穿たれている。
火口跡のようなものも見られ、火山活動によるものかもしれないが、この地形に関する資料が見つからなかった。
一番標高の高いものは760mで、地理院地図で8つを確認できた。


 

フレベ1000棚池群(6つ)

標高1,000mという高所から棚田のような階段状の地形に、複数の池が見られた。地理院地図では1つだけ池として記載されているが、立体航空写真では他にも明瞭な沼が確認できる。少しあやしげなものも入っているが、おおよそ沼の形態を持ちそうなものが6つあった。
この棚田のような奇妙な形態の天然湖沼は、遠音別岳の反対側斜面のほか、ホロベツ川源流部にも見られる。
なお「棚池」は一般的な用語ではないが、拙著『日本全国 池さんぽ』で棚田を改造した人工池を解説するために使用した。

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地形空撮



 

マップ

池さんぽマップ



Googleマップ

マークした場所は駐車スペース。