「神々の遊ぶ庭」に穿たれた山岳湖沼の大伽藍
北海道の最高峰を持つ道内最大の脊梁山脈だけあって、この巨大な山塊が擁する湖沼の総数は大小合わせれば百は下らないだろう。それもそのはず、南北40km東西30kmに及ぶ大雪山国立公園は山岳公園として国内最大。
アイヌ語で「川がめぐる上の山」や「神々が遊ぶ庭」という名が付いている山塊だけあって、抱える山岳湖沼群もまた宝の山のよう。
大きく四つの山塊(表大雪、東大雪、然別、十勝)に分けられ、それぞれ個性の違う表情を持った池群がある、・・といいたいところだが、火山活動の激しい十勝連峰だけは山池らしい山池がなく、湖沼が生まれるのは何百年後か何千年後か。
- 「神々の遊ぶ庭」に穿たれた山岳湖沼の大伽藍
- 「川がめぐる上の山」の「神々が遊ぶ庭」
- 大雪山を構成する四つの山群
- 大雪高原の山池群(20沼)
- 「沼の平」の湖沼群(少なくとも30沼)
- 最高峰「旭岳」山腹の山池群(8沼以上)
- 熊ヶ岳の池、御鉢平カルデラ
- 忠別沼と忠別川源流の沼沢群(17沼以上)
- トムラウシの山池群(3沼)
- 東大雪・石狩連峰の池群
- 糠平湖・然別湖・東雲湖
- 動植物
- マップ
「川がめぐる上の山」の「神々が遊ぶ庭」
「ヌタクカムウシュペ」というアイヌ山名が意味する「川がめぐる上の山」について深田久弥氏は「日本百名山」の「大雪山」の項で冒頭から熱のこもった筆致をくり出し、川の源をなす姿見の池や沼の平について言及している。
大雪山という名はいつ頃からついたかはっきり知らないが、もとはヌタクカムウシュペと言った。(中略)「川がめぐる上の山」とは、原始民の直截素朴な、まことに当を得た名づけ方であって、石狩・十勝の二大川がその源をこの山塊から発し、その麓をめぐって流れている。
しかし今や大雪山である。
(深田久弥『日本百名山』)
大雪山を構成する四つの山群
2千メートル峰を26も持つ。
大雪高原の山池群(20沼)
雪屏風を背にした標高1300〜1500mの豪快地形の山池群
「大雪高原温泉 沼めぐり登山コース」が設定されており、沼めぐりをする際には登山口にあるヒグマ情報センターでレクチャーを受ける必要があるほか、池ごはんができる場所も緑沼、大学沼、高原沼の三ヶ所に限定されている。またコンロなどの調理はコース内では全面禁止。
コースは1周7kmで徒歩4時間。入山は7:00〜13:00。
登山口に温泉施設が併設。現地のレクチャー資料には、このコース内だけで18の名前のある池が記載されている。
アクセスと登山口
ダート路で10kmほどで登山口
ビジターセンター
施設名は、大雪高原ヒグマ情報センター。沼めぐりをするには、ここでレクチャーを受ける必要がある。
部屋からのドアが登山路入口にもなっている。ヒグマに関する資料や、近日中の細かなヒグマ出没情報が掲示されている。
大雪高原温泉
登山者用駐車場を兼ねている。
コース
「大雪高原温泉 沼めぐり登山コース」の起点あたり。川を渡ってからしばし登り。
「沼の平」の湖沼群(少なくとも30沼)
登山口へのアクセス路
舗装路が19km
終点の愛山渓温泉まで1.5車線の舗装路が19kmも続く。愛山渓ドライブインが起点の目印。
登山口駐車場
愛山渓登山口
松仙園登山道(一ノ沼〜四ノ沼)
この区間は一方通行。愛山渓温泉のスタート時点で間違えると取り返しがつかないので、スタート直後にコースを間違えていないかよく確認しよう。
大沼・小沼
沼の平より一段低い標高1.350mほどのテーブルランドに穿たれた周囲長800mクラスの湖沼。この二湖が「沼ノ平」に含まれているかも不明。
アクセスルートなし。
登山コースログ
最高峰「旭岳」山腹の山池群(8沼以上)
旭岳ロープウェイ
ロープウェイを使えば、いっきに標高1,600mの世界へ。
瓢沼と御田ノ原
ロープウェイ上りの左側の車窓から見える。アクセス路はないようだ。
天女ヶ原湿原
段丘下側が、天女ヶ原湿原。
姿見の池など旭平の湖沼群
ビジターセンター
駐車場
案内板
熊ヶ岳の池、御鉢平カルデラ
御鉢平カルデラ
このカルデラを発生させた火砕流は高さ200mもの火山灰層となって層雲峡や天人峡の柱状節理を生み出した。まさに大雪山の陰の盟主。
熊ヶ岳の火口壁に沿って褐色の沼
名称不明。
登山口は層雲峡
層雲峡のビジターセンター
忠別沼と忠別川源流の沼沢群(17沼以上)
旭岳から見た忠別岳
左写真の左側にある突起のような山が忠別岳。
大雪高原から見た忠別岳
なだらかな高原ハイキングだが、ここにアクセスするまでが大変。アクセスルートである三笠新道がヒグマ生息地のため、ヒグマによる長期通行止めが毎年くり返される日本でも例のない登山路。しかし大地の上に上がれば空を写した池塘が嵌め込まれた天上の花園が広がる。
大雪高原温泉から往復6〜7時間。
忠別川の河岸段丘と集水地形
忠別湖
トムラウシの山池群(3沼)
ヒサゴ沼、北沼、南沼
日本最大の山岳遭難で有名になってしまった。山中泊が必要か。百名山にも出てくる。
日本一汚い野営地になってしまった沼
トムラウシ山頂直下の北沼・南沼のほとりが登山者の野営指定地になっており、彼らの糞尿が積み重なる「日本一汚ない野営地」の汚名を返上すべく取り組みがなされている。
旭岳からの山影
東大雪・石狩連峰の池群
沼ノ原大沼(石狩連峰)
石狩連峰登山のテント場に指定されている。周辺に10沼以上の池塘。
五色沼と五色平の池塘(20沼ほど)
アクセス路のない秘湖が豊富。
白色沼(丸山の噴泉塔群)
はくしょくぬま。1950年ごろに白色沼が確認・撮影されているが、この際、池畔にある噴泉塔群は見られない。
以下、展示案内板より。
噴泉塔群の南側には白色沼が存在します。この沼からは無数の炭酸ガスが沸いており、水温は15°C前後です。沼の大きさは長径約70m、箱約26mで、水深は1981年の調査で4.5mでしたが、2010年の調査では3.5mと浅くなっています。
十勝三股カルデラ(十勝三股盆地)
カルデラ湖、火口湖はなし
三股カルデラ内にカルデラ湖や火口湖の生き残りは見られず、樹海が広がっている。「三国峠の大樹海」は日本遺産に認定。
写真は外輪山の三国峠から俯瞰。
発電用取水ダム(音更取水ダム)
カルデラ内を流れる音更川に発電用の取水ダムが設けられている
糠平湖・然別湖・東雲湖
ビジターセンター(ひがし大雪自然館)
動植物
マップ
ジオラマ
旭岳温泉のビジターセンターに展示。
ニッポン湖沼図鑑マップ