水辺遍路

訪れた全国1万1,450の池やダムを独自の視点で紹介

大雪山「沼の平」六ノ沼・五ノ沼・半月沼(北海道上川)


大雪山「沼ノ平」の魅惑の湖沼群

百名山・大雪山の一角を占める愛別岳山腹、標高1,450mほどの闊達な踊り場に立地する湿原の天然沼沢群で、その名も「沼の平」。
標高1,030mの愛山渓登山口から一番遠い六ノ沼まで片道3.7km、標高差400mほどの登山で会うことができる。
全国のガソリン価格平均が史上最高値を更新したニュースが飛び交った2023年8月30日、北海道のローカルニュースでは男女二人の登山者の行方不明が報じられた。彼らがめざしたというその沼に、この日、それと知らずに私も向かっていた。

六ノ沼は、庭園池のように岩が顔をだすユニークな池塘

前日入山したまま行方不明の道外登山者二人が

2023年8月30日。愛山渓登山口に到着したのは午前8時30分。このとき愛山渓登山口は報道陣、消防レスキュー隊、警察山岳救助隊がひしめき、上空にはレスキューヘリが飛んでいた。
登山者用駐車場には私の他には本土ナンバーの軽自動車しかとまっていなかった。宿泊者用駐車場は消防車両、報道車両などで埋まっていた。
一方通行となっている一ノ沼、二ノ沼のある松仙園と名付けられた湿地から四ノ沼湿原を抜けると、八島分岐というポイントに。
雨が降ってきたのと、ずっとレスキューヘリが頭上近くを飛んでいて騒音で落ち着かないので、このまま下山しようか迷ったが、せっかくだから400m先の半月沼まで歩いてみて、雨あがり待ちして空撮しようと分岐を帰路とは反対の方に進んだ。
その瞬間、ザックのポケットに入れていたケータイが勝手にピポパと鳴りだし、びっくりして取り出すと電話モードのキーパッドになって勝手にどこかに電話をかけようとしていた。
番号は「777」だった。
このザックのポケットにいつもケータイを入れているが、こんなことは初めて。遭難者はもう亡くなっているのはないかと胸騒ぎがした。

八島分岐


 

半月沼

レスキューヘリ、再び

半月沼までやって来ると、レスキューヘリは撤収したらしく音がしなくなった。ちょうどよい休憩場所が設けられていたので、池ランチをしながら雨が止むのを待ち、空撮機材を飛ばした。
ところが飛ばしてほどなくヘリの爆音が。即時、収容したものの、ヘリは超低空飛行ですぐ目の前に。びっくりした。
後で分かったことだが、この日、湿原に入ったのは私だけだったので、捜索ヘリとしては人影はすべて確認のために近づく必要があるらしかった。
それにしても、一ノ沼からずっとヘリに付けまわされているかのような感じになってしまって落ち着かない。まったく、なんて日だ・・。

半月沼の休憩スポット

木道本線から少し下る分岐があり、デッキが設けられている。


半月沼の空撮



 

五ノ沼

木道から離れている。奥側の小さな沼群が五ノ沼と思われる。




六ノ沼

六ノ沼の形態と景観

湖面標高1,450m

水位の変化はほとんどなさそう。


「シュレンケ」池塘の成因

流出口は西側に一ヶ所

木道の橋がかかり水音がするのですぐ分かる。

底は岩を敷き詰めたよう

湿原の池塘と呼ぶには大きいし、六ノ沼はちょっと変わっている。沼といいながら底は岩を敷き詰めたようになっており、水面のところどころから岩が頭を出している。

六ノ沼の空撮

六ノ沼のパノラマ


 

下山すると・・

遭難者の目的地は六ノ沼だった

午後1時ごろ、愛山渓登山口まで下山するとレスキュー隊の人に状況を聞かれた。
ちょうどこの日、もう1組の登山者も下山したところだった。ただ彼らは沼めぐりとは方角の異なる永山岳をめざしたそうだが雨で撤収してきたとのこと。
町のドライブインまで戻ると、テレビのニュースで道外の登山者二名が「六ノ沼に行く」と宿の人に言ったまま戻ってきていないと報じられていた。
19時のニュースを待って確認したところ、まだ発見されていないとのことで、翌朝からも捜索が行われる。
登山口から六ノ沼までまっすぐ行く分には難所らしい難所もなく、むしろ登山道や道標、案内マップなど、よく整備されており、迷い込むようなところもなさそうに思っただけに不可思議。
気温はTシャツで雨に濡れて少し肌寒いぐらいだったが、夜でもカッパを着込めばしのげない気温ではないと思うし、水はそこらじゅうに豊富だし、何とか無事に見つかってほしい。

8月31日続報

大雪山の最後のミッション池である旭岳「姿見の池」などを終えて、昼過ぎごろにクルマで山を下っているときに、途切れ途切れに電波が入るNHKニュースで、遭難していた男女二人が保護されたとの報が。女性は起点の登山口まで自力下山、男性の方は松仙園の入口近くに捨て置かれていたようだが命に別条はないとのこと。やはり六ノ沼をめざしていて道に迷ったという。
遭難の当事者は東京と京都の人で別々の旅行者が、意気投合したのか、いっしょに入山したとのことだった。
それにしても腑に落ちないのは、昨日は4時間ぐらいはずっとヘリが付近を低空を飛んでいたし、男性が発見された場所も含めて私も六ノ沼までを歩いていて空撮用ラジコンまで飛ばしたのに、オーイとか叫んでくれれば声の届く範囲にいたはずだと思うのだけど。いや、逆にヘリの音が大きすぎて、助けを求める声が聞こえなかっただけ? そのぐらいヘリの音がずっとしていた。

 

マップ

ニッポン湖沼図鑑マップ



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