鯉のぼりにへばりつく金太郎は、この池の伝説から?
農地が点在する中山間地の窪地に立地する伝説の池。
池名も魅惑的だが、現在の実態は事実上のロストレイク(消失湖)である。
金太郎発祥(生誕)の地ということもあって、周辺には、ゆかりの事物が散見される。
ここ沼子池に限っていえば、金太郎が飛び込んで大鯉を捕えようとした際、金太郎に抱きつかれたまま巨鯉が水面高く舞った、という伝説がある。
金太郎というと何となくクマにまたがった赤い前掛けをした子ども、というイメージで、正直、何をした偉人なのか知らなかったが、平安時代の名将・源頼光の四天王の一翼を担う猛将であった。
大江山の鬼「酒呑童子」退治のメンバーにも入っているから、歴史のみならず物語、伝統芸能でもスターだったわけである。
なるほど、沼子池には鯉にまたがる金太郎像が置かれ、周囲が沼子弁天公園として整備されており、六月に開催される地元のお祭りなどで活躍している。
「巨鯉が潜む伝説の沼子池」という字面からは、どんな池なのだろうと期待がうずまくが、実際の池の姿はかなり人工的。
池畔に弁財天が祀られているという点では寺社池といえるが、その形態は公園池タイプ、さらにいえばジャブジャブ池に近いものだった。
金太郎が飛び込んだというオリジナルの沼子池は、千年の月日のあいだに土砂堆積で陸化したか、水源の枯渇、または狭窄部の決壊かで消失してしまったのだろう。往年の姿は窪地の地形から想像するしかない。
そのスケールにつては、かつては池畔にあったと思われる沼子弁財天の位置がヒントになりそう。昔の池岸は、すり鉢地形のかなり外側にあったようだ。
敷地全体を見下ろす道路側に立って目を細めてみれば、なるほど、なみなみと水をたたえた魅惑の池の姿が立ち現れてくる。ここは伝説と地形を想像でつないで楽しむマニアックな池ともいえそうだ。
すぐ隣にある八重桐の池もヒントとして力強い。こちらは近代工法の立派な溜め池ではあるが、70mほどしか離れていないので、水辺の雰囲気としては近いものがありそうだ。
コイノボリに、この池の伝説が反映??
この池の金太郎鯉伝説がもとになって、じつは日本の鯉のぼりには金太郎が描かれているものも多いという。
ええっ?! と思って急いで鯉のぼりの画像をいろいろ見ていたら、確かに鯉の体側にへばりついている金太郎がいた。
これから泳いでいる鯉のぼりを見かけたら金太郎を探してみることにしよう。
マークした場所は八重桐の池の駐車場。沼子池まで徒歩数分。