水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

能蔵池(山梨県南アルプス)

のうぞういけ。

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能蔵池。拙著『日本全国 池さんぽ』より

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伝説が多く記された能蔵池の案内板

 

椀貸伝説ここにも。

椀貸し伝説は全国に残る池伝説でもよく見られるパターンで、昨日紹介した長野大鹿村の大池では椀を貸してくれるのは池ヌシの馬だった。
対して、ここ山梨県南アルプス市の能蔵池でお椀を貸してくれるのは赤牛である。ただ、赤牛は大蛇が化けたものという説もあり、そういえば大鹿村の大池でも馬ではなく大蛇とする説があった。
二つの池は南アルプスをはさんで東西に遠く隔てられており、直接の文化交流はなかったと思うが、諏訪湖を頂点とする竜蛇信仰の影響を受けているのかもしれない。

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椹池→大笹池→能蔵池と逃げる赤牛

甘利氏に追われ椹池から赤牛の姿で逃げだした池の主の大蛇。一時、大笹池に隠れたが、ここも追われて逃げ込んだのが能蔵池とされている。
伝説の別バージョンのひとつが椀貸伝説で、雨乞いの効験あらたかだった能蔵池に棲む神様がいたが、好意を仇で返す人間に怒り、赤い牛の姿となって池を飛び出し、山奥の椹池に引きこもってしまったというストーリー。これは現地の案内板に概要が記されている。

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現在の能蔵池
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池の多くは島が占める

池のほとんどを島が占めているといってもいいほどの構造となっている。
貯水機能は低そうで、一見すると池というより水路に見えてしまう。鯉の魚影があったが釣り禁止。

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左岸側から池を見おろすと、ほとんど島しか見えない。赤い橋の先が島。



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島が大きいので、まるで水路。釣り禁止看板も


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中の島には赤い橋で渡る。足もとが鉄製の網なので、スベるしちょっとスリリング


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流れ込みはコンクリート壁に覆われ、小さな滝状に


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鯉の魚影


 

島の奥にある弁財天は縁かつぎの石も

島の奥に据えられた二基の祠。その前にある三つの石を持ち上げると願いが叶うといわれ、縁かつぎのパワースポット。

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溜め池としての顔

崖下から湧きだした伏流水を水源とし、古くから堤が造られ溜め池として利用されてきた。能蔵池の碑もある。
往時の崖は現在はコンクリートで覆われている。一方、堤側はコンクリート補強がなされた明瞭な堰体構造が見てとれる。コンクリート製の洪水吐にはスライドゲート付きの水門も。

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堰体と洪水吐
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水の流出口は二門?


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水の流れ出し先


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左岸側に変電設備も。池とは関係なし?


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インレット側にある能蔵のエドヒガン桜。


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エドヒガン桜のあたりも、くぼ地になっている


 

堰体わきに赤い鳥居が並ぶ稲荷大明神

堰体わきの左岸側に稲荷大明神の赤い鳥居が並ぶ。

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堰体天端は車も通行できる道路。奥が稲荷大明神


 

アクセス、駐車場とGoogleマップ

アプローチ路は住宅地を抜ける。少し分かりにくいが、南アルプス市 ふるさと文化伝承館が池に隣接しており、駐車場やトイレ、資料館もある。

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南アルプス市 ふるさと伝承館と駐車場


マークした場所は駐車場。