水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

奈良池(神奈川県横浜)

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農地なので立ち入りを控えたが、向こうに見えるフェンスのある土盛りは、奈良池の堰体とみて間違いないだろう

奈良といっても、神奈川県横浜市青葉区の町名である。
また、この池は鶴見川水系奈良川の源流域にあたる谷戸に位置している。といっても、現在は玉川大学の敷地内にあり、同学農学部のフィールドワークにも利用されている。
大学の敷地といっても森林の中にあり、さすがに無許可で敷地の内奥にあるこの池までズカズカ入るわけにもいかないので、堰体下側の大学敷地外からのアプローチを試みた。
池の下はみごとなまでの谷戸地形に農地が広がる。といっても谷戸の一歩外はぐるりと住宅地。休耕田もあり、この谷戸地形の田園風景がいつまでつづくかは分からない。
玉川大学の正門前にある玉川池は東京都だが、この奈良池は神奈川県。学園の敷地内に県境が通るため、学園内にある二つの池の自治体が異なるというかっこうになっている。
農地のわきを通る遊歩道には案内板が立っていた。

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歳月を感じさせる色あせた案内板だが、貼り出された資料は10年以上前の2009年!
西谷戸内市有地の「自然公園化を提案します」と題された資料には、休耕田を池に改造して往年の里池の環境を保全する計画が記されていた。
10年以上たった今、この計画はどうなったのだろう。この谷戸の一角に奈良池を保全する玉川大学農学部が無関係ではいられぬ計画とも思えるだけに、経過が気になる。
玉川大学・農学部生物環境システム学科の吉川朋子教授は奈良池についてこう語っている。
「奈良池では、神奈川県内で最後までゼニタナゴの生息が確認されていました。現在、ゼニタナゴは絶滅危惧ⅠA類に指定されており、神奈川県では見られなくなってしまいました。その原因のひとつは、外来魚によるものだと考えられています。奈良池ではゼニタナゴが中国産のタイリクバラタナゴに取って代わられた後、現在確認されている魚のほとんどが北米産のブルーギルです」
ゼニタナゴ!!!
神奈川県で最後までゼニタナゴが生息した池だったんですね!?
上述の2009年の提言にも、休耕田を改造して造った池にゼニタナゴを放流する計画が記されていた。
玉川大学さん、敷地外のこととはいえ、この素晴らしい谷戸を保全するために、ひと肌脱いでいただけぬものでしょうか。

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