水辺遍路

訪れた全国1万1,450の池やダムを独自の視点で紹介

上水之尾用水溜池(神奈川県小田原)

【水之尾水源池】

2023年12月中旬の上水之尾用水溜池

水位は低く、土砂流入で底も浅い。水底に沈んでいる祠の屋根が出ていた(2022年4月)


初夏の上水之尾用水溜池(2022年6月撮影)


 

山中にひっそりとたたずむ農業用の溜め池

江戸時代享和年間に大久保藩によって、うなぎ沢の源流近くを堰き止めて造られた農業用水の水源池。箱根へとつらなる外輪山の鬱蒼とした森の中にあり、舗装林道が通じている。通りかかる人やクルマはほとんどいない閑静な水辺である。
こんな山中に単独の溜め池が造られたのは江戸時代のこと。高台の耕地を水田にするための用水供給が目的だったが、平成元年の改修では自治会が中心となって溜め池の保存に尽力した。
現在、水の用途としては近くにある辻村植物園の池などに分水し、用水としては自治会の防火用水などに利用されていて、農業用としての役割はほとんどないようだ。
堰体はコンクリートで補強され、天端は歩けるようになっており、案内板と水上デッキも設置。ちょっとした休憩にはほどよい。
側溝ほどの洪水吐から流れ出しているのが従来の用水であろう。これとは別にコンクリート製の取水口が増設されているが、これが植物園への分水口であろうか。

この池を初めて訪れたのは2011年で、当時はGoogleマップにも池として出ていなかったこともあって、思いがけず現れた池との出会いに感激しのを覚えている。
タナゴ竿で釣り糸をたらすと、すぐにモロコが釣れた。このとき30センチほどのブラックバスも見かけ、こんな小さな池にまで・・と驚いた。25mプールよりも小さいぐらいの池である。
小型在来魚が食い尽くされるのも時間の問題と懸念し、2012年に何度かルアーやミミズを使っての捕獲を試みるも、頭のいい個体ですぐに見切られてしまった。
たまたま放流したご本人から話を聞くことができて、ブラックバスが全国に放流されていた1990年ごろに河口湖で釣った5尾のうちの1尾か、その子の唯一の生き残りであろうとのこと。他の個体は長らく見ていない。
2013年6月ごろには姿が見えなくなったので、さすがにエサ不足で死んだものと思っていたものの、2016年5月に再び姿を確認。2019年も健在。
初めて見てから8年。お互い年をとった。
しかし2022年、ブラックバスも鯉も姿を消し、そのかわりモツゴが大量繁殖。しかし二ヶ月後再訪すると、魚の姿は一尾もなく・・。いったい何が?




2013年6月



2018年8月、ブラックバスと鯉が夫婦のように連れそう姿を見ることができた。鯉の魚影は1月に初めて確認したが、ブラックバスとちがってなかなか姿を現してくれず、撮影できたのは今回がはじめて。魚体はかなり黒く、同サイズがもう一尾いた。一方、おなじみのブラックバスの方は鯉の行動と同化してきたのか、前にも増して警戒心がなくなり、人影を見ても悠然としている。さすがに老化なのかエサ不足か、体はやや小さくしぼんできた感もある。


 

水源の水くみ場

バーベキュー禁止に(2022年)

2022年6月に水源入口にロープが渡され関係者以外立入禁止に。バーベキュー禁止の掲示もあったが、こんなマニアックなところでバーベキューする人たちが?
そういえば半年ぐらい前に何かの撮影のけっこう大がかりなロケ隊がここにいたのを思い出した。



かつてはヤマメが釣れたことも

2017年、池から50mほど林道を上ったところに池の水源を見つけた。何度も来ているのに一度も気づかなかった。
一般車両の閉鎖ゲートがあり、転回スペースとして広くなっている。けっこう大がかりに何かのロケをやっていたこともあったが、よくぞ、こんなマニアックなロケ地を見つけてきたものだ。
水をくめるように、ひしゃくとコップが用意されている。
水は林道の下をくぐって森側に流れ出し、池のインレットへと下っている。
地元の人からの情報で、1990年ごろにはこの流れ込みでヤマメが捕れたとのこと。




 

取水設備?

十回以上は来ている池なのに、2022年6月にインレット側道路沿いに、水門のような設備を見つけた。門まで付いている。
発見したのは妻。まったくもって自分の目のフシアナぶりには驚かされる。
耳を澄ますと水音がする。池に入る前に水源から分水されているようだ。これについては今後、調べを進めていきたい。


 

流れ出し

流れ出した水は沢を通じて水路に。
少し下流側で道路下をくぐり分水。

分水部


 

案内板

案内板


 

生息魚類と釣査

2023年12月 インレット側で工事

インレット側に工事用の道が造られていた。水源側には変化なし。
魚影は確認できず。



2022年6月 魚が消えた

4月には大量の日本産淡水魚の魚影を確認したばかりだったが、2ヶ月で魚影が皆無に。どこかに隠れているはずと思っていくら探しても、魚一尾いない。こんなことは初めて。どういうことだろう・・。




2022年4月(2回取材)大量の小魚

驚くほどの魚影。ブラックバスがいなくなるとここまで殖えるのか、と実感した

あいかわらずブラックバスおよび鯉の魚影は見あたらず。
ブラックバスがいなくなるとここまで爆発的に殖えるかというぐらい、大量のモツゴの魚影が。
訪れた際、ちょうど池の周囲の木々を伐採しているところだった。こんなに明るく、まる見えの状態は初めて見た。
その後、どうなった気になって再度、見に行った。ちょうどその日は害獣駆除のためトランシーバーを付けた狩猟犬がノーリードでうろうろ。怖かったので池でご飯を食べただけで帰ってきた。

周辺の木が伐採されて明るい雰囲気になった(2022年4月)


木が伐採されて明るい雰囲気になったのはいいが、水量が少ない。水底に沈んでいるはずの祠の屋根が出てしまっている。
洪水吐を見ると、下から漏水しているようだ。
吐き出しから先の水の流れは以前は見えなかったが、木々が伐採されて滝があることが分かった。その先は道路下をくぐってすぐに分水があった。写真を付けておく。

木が伐採され、スカっとした見晴らしに。木杭の柵は新設? それとも前からあったかな。木が茂っていたのでよく覚えていない。


2022年1月

ブラックバスおよび鯉の魚影は見あたらず。
流れ込み側に大量の土砂の堆積が見られ、全体的にかなり浅くなっている。
池の上手の林道沿いに駐車スペースが造られていた。

流れ込み側。堆砂が進む


新しく設けられた駐車スペース


2019年9月

撮影の新システムをテスト。
地元の人の話で、かつてはヤマメもいたと聞いていたが、小さな虫が水面に落ちると襲ってくる小さな魚影があった。日本産淡水魚に見えたが、あるいはヤマメがまだ生息している可能性もあるかもしれない。ほか鯉とブラックバスを確認。
ブラックバスは年をとりすぎてほぼ仙境に至るという感じ。水上と水面下を同時に撮影する新しい試みを試していた一時間ほどのあいだ、ずっとそばにいる。
逃げないし、近くに小魚がいても、追っかけもしない。ただ水の上の人間の営みを見るともなく見ているようだ。

仙境に達した、顔なじみのブラックバス。もはやここまでになると健康をいたわりたくなる


水上と水面下を同時に一枚におさめようという試みは、うまくいかず。まず、水中が濁りで何も見えない。また水の表面張力で撮像が歪んでしまう


 

2016年〜2018年

モロコ、ブラックバス、鯉を確認。



2016年5月。左の写真中央にバスが見える。

今やこの池のヌシ然としたブラックバスは老獪な容貌をまとい、こちらの姿を見てもまったく動じず、目の前で悠々と浮いている。体長は35cmぐらいで5年前とそれほど変わっていない。エサはそれほどないはずなのに病気かと思うぐらい太っていた。
2018年1月に、この池で初めて40センチほどの鯉を見かけた。池底がほとんど見えそうな池なのに、今までどこに隠れていたのか。例のバスはしばらく見かけなかったが、前よりもつやつやした感じで再び現れた。
長年、小さな池の生態系の頂点に君臨しつづけてきた自信か、それとも奢りか、すでに完全無敵の余裕をまとっていて、こちらの姿が見えても、まったくもって逃げようとせず、日なたぼっこをしたり、ときおり池を右まわりにゆったり巡回などしている。
ウッドデッキの下あたりに望遠レンズを向けると、驚いたことに小さな在来魚も健在であった。これはうれしい発見だった。





2018年1月。7年来の馴染みとなったバスはともかく、在来魚も健在だった

2013年

2011年の釣査

タナゴ竿にて釣査。モロコを確認。



(左)2011年7月(右)満水状態の2012年冬


 

動画


 

空撮






 

マップ

池さんぽマップ

Googleマップ

マークした場所は、水くみ場のある駐車スペース。