水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

大正堀川防災調整池(茨城県龍ケ崎)

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沈砂池と遊水池の二段構成で、総面積11haの大型防災調整池。洪水吐下にも湛水ゾーンがある。
敷地内は平時は野球場などオープンスペースとして開放されており、駐車場も完備。
中学時代後半を過ごした35年ぐらい前はニュータウンができたばかりのころで、この池の周囲はまだ宅地開発が進んでおらず、広大な空き地の奥の雑木林の中の無気味なコンクリートダムといった雰囲気だったのを、今でもよく覚えている。

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中学の級友のKと二人でときどきこの池で遊んだ。最初はスルメか何かでザリガニを釣っては解体してむき身に。それをエサにまた釣った。あっという間にバケツ一杯のアメリカザリガニ。
最後は一箱分の爆竹で一網打尽にした。日も傾き、達成感のような高揚が少し覚めると、入れ替わりに寂寥が影をのばしはじめていた。
「質量保存の法則があるから、地球全体で見たら何も変わらないよ」
強がりでそんなデタラメを言ったら、Kは神妙な顔で首を振り、
「イチハラくん、違います。ひとつだけ増えたものがあります」
と、なぜかデスマス調。
「それは、悲しみです」
二人で腹を抱えて笑った。笑いながら、やっぱり後味が悪かった。子どものころはカエルや虫をよく虐待したが、そういうこともそれが最後だったように思う。

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30年以上たって、あのダムはどこだったかと思い、いつか再訪してみたいと思っていた。
当時はスーパーと銀行が一軒あるだけで他はコンビニもないような小さな町だったので、今では大型ショッピングセンターが立ち並ぶほどに町が大きくなりすぎて、池を探そうにも空間の感覚がもはや浦島太郎。
位置からすればこの調整池で間違いないはずだが、記憶の中の無気味でさびしい雰囲気とはまったく違うオープンな雰囲気。四車線道路が通り駐車場やコンビニまで隣接しているではないか。
もしやと思って水路の中をのぞきこむと、たくさんのザリガニが。ああ、やっぱりここだったか。
現在は釣り禁止。

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アメリカザリガニは健在。あの非道な虐殺を生き残った子孫たちだろうか。
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