名前が消えた幻の「釜屋谷ダム」は今?
堤高16mのハイダムスペックを満たす溜め池として「地図蔵」に掲載。
2021年時点のGoogleマップでは上流側の池と合わせて「上堤」「下堤」となっており、これは輪島市が公開しているため池ハザードマップの「釜屋谷地区」に記載された名称を典拠としている。
堤高16mの釜屋谷ダム・・信頼性の高い「ダム便覧」や「ダムマップス」には載っていない。「地図蔵」のダムマップはしばしば不正確な記載もあるし。どっち?
こんなよく分からない状態がかえってモチベーション充填。いざ現場へ。
アプローチ路は集落のはずれ。民家が近いので駐車は避けたかったが、かろうじて迷惑にならなさそうな所にハイエースをねじ込む。もっとも不審者として通報されてもおかしくない。妻にクルマで待機してもらうという選択肢もあったが、30分の一本勝負とする。
池まではおよそ1km。グズグズはしていられない。
と思っていたのに、いきなり水道設備が現る。
「輪島市水道課」と記名されている。
となると、なんてことだ。「釜屋谷ダム」は、もとは輪島の水道水源池だったってこと?!
くわしいことは、いずれ輪島市水道課に訊けば分かるだろう。問い合わせ先をゲットできたことも重要な現場成果。
先に進む。
未舗装の緩い上り勾配の林道を1kmほど進むと、池の場所に到着。
水がなく、リバーチャネルがくっきり。
水抜きかと思ったが、水の抜け方に少し違和感。底樋を使った一時的な抜け方ではなく、リバーチャネルが沢の流れとして常態化した感じで水なしダムを思わせる。
もしかして廃池?
かたわらには、うごーっと下まで連なる階段状の斜樋!
風呂栓タイプが10穴ぐらい。全部開いている。全開。
そして見つけた。あんなとこに木の底樋??
崩れている。崩落しているが、確かに木組みの痕跡。
あんな沖に底樋があるとしたら、どんだけ深い池か。
しかし底樋を完全に無視して水が流れている。
この水はどこから堰体を素スリ抜けているのだろう。
すると堰体基部に、あった。穴が。
ゴミ除けの簡易的な鉄製スクリーンが置かれてる。
この池のデータベース登録名は「下堤」。
では、上堤の方はどうなっているのだろう。あるいはそちらが釜屋谷ダムなのだろうか。
先の道は荒れはじめていた。
興味が先行して突き進むが、妻がついてこない。
彼女は優秀な猟犬のように何かを嗅ぎ付けるや、足どりが重くなって離れていく。行きたくないのサイン。これまで数々の見落としやピンチを彼女の嗅覚に救われた。
しかし、すまぬ。ここは行くしかないのだ。
(「釜屋谷の上堤」へつづく)
マークした場所はアプローチ路入口。