おおねさかだむ。
平戸島から、さらに船で渡る「的山大島」唯一の「ダム」に疑惑が・・
「ダム便覧」に掲載されているハイダムスペックの溜め池で、2022年時点ではGoogleマップにも「大根坂ダム」としてマークアップされている。しかし、調べていくうちにある疑惑が・・?
海が目の前の溜め池
「ダム便覧」によれば堤高15.1mの農業用アースダムということであるが、管理状態はよく、手入れが丁寧で池愛を感じる。
こういう池はほとりに立っているだけで幸せな気持ちになってくる。後ろを振り向けば海が広がり潮風も心地よくさわやか。
堤体
海に向かって裾を落とすなだらかな斜面に造られているので、堤頂長は長く「ダム便覧」では147mとなっている。一方、高さは15.1mを感じさせない。堤の左岸側斜面および直下は棚田が広がる。
取水設備・洪水吐
本土の標準的な溜め池とあまり変わらぬ仕様。取水の取り回しをよくするためか、サイフォン用のホースも見られた。
池へのアプローチ路入口
港からは一番遠くにある池で、舗装農道で山越えをしなければならない。
池への最終アプローチは、コンクリート舗装の狭い道。軽トラが入って行った。
そもそも「大根坂ダム」は存在するのか
【疑惑1】堤高が足りない?
現地で堤高が15mあるようには見えなかった。長崎県のオフィシャルため池データベースを開いてみると・・。
【疑惑2】堤高15.6mの星山池
「大根坂」という地名に含まれる池で、星山池という近くの池が堤高15.6m、堤長137mで登録されていた。この池については「ダム便覧」未掲載のようだ。アプローチ路が閉鎖されていたので、堤を確認できなかった。ダム下側の農道にまわるか空撮をすべきであったが、このときはそんなことも知らず。
【疑惑3】「大根坂ダム」が見あたらない
長崎県オフィシャルため池データベースで、大根坂の地名で登録されている池は上記の星山池をはじめ5池。しかし、肝心の「大根坂ダム」がない・・。
【疑惑4】堤高15.1m、堤長147mの池がそもそもない
「ダム便覧」の「大根坂ダム」の項の堤高15.1m、堤長147mというデータに合致する池がそもそも見あたらない。
数値的に近いものは星山池だけ。(堤高15.6m、堤長137m)
念のため大根坂ダムの堤長をGoogleマップの航空写真を使って計測してみると、おおよそ105mほどでデータの147mには及ばない。
【疑惑5】「大根坂ダム」は俗称で、本名は「星山池」?
ならば「大根坂ダム」なるもののマコトの名は「星山池」なのではないか、という可能性が高くなってくる。
通称として「大根坂」の地名をあててダムと呼ぶのは、全国的に見てもありえること。しかし微妙に細かいところでデータ値が違っているところが気になる。
【疑惑6】それでは「大根坂ダム」とされた池の正体は?
ため池データベースに「大根坂」の地名で登録された5つの池のうち、地図上で二つの池は名前と場所が一致している。残る3つのうち、データの堤長と堤高が現場の感覚と合致しそうなのは「佛法池」のみ。
佛法池(仏法池)は堤高8.4m、堤長107mで登録されており、先ほどの数値とほぼビンゴ。
ということで、君の名は仏法池。でしょうか。
でも、下に貼り付けたデータのように、オフィシャルデータベースといえども100パーセント正しいとは限らない。真相はどこに?
的山大島の池群
棚田を潤す池群
的山大島(あづちおおしま)は難読であるが、地元の人は単に「大島」と呼ぶ。
この有人島では漁業と棚田での農業が行われている。米作が中心と思われるがブランド米は確認できていない。棚田に水を引くため、周囲長200〜700mクラスの溜め池が地図で確認できるだけで20以上あり、かなり池密な島といえる。
余談ではあるが、的山大島の漁師さんはスイスのレマン湖の漁師さんと交流を続けている。
石積み
棚田および池の一部の土止めに野面積みの石垣が見られた。
的山大島へのアクセス
フェリー
平戸島の平戸港から平戸市営フェリーが一日往復五便体勢で運行されている。
レンタルサイクル
電動アシスト自転車を港の観光協会でレンタルできる。