水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

牛の池田ダム(高知県大月)

うしのいけだだむ。
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安部累氏の「位置未確認ダムを探して」は「ダム便覧」の中でも異彩を放つ好企画で、ここに出てくるのはダムだか溜め池だか区別が付きにくいものが多く、その推理、解明過程もおもしろい。
隔絶の僻地にある牛の池田ダムもそんな溜め池のひとつで、そもそも現地では「長沢ダム」という表記しか見あたらず、行政資料でも「牛の池田ダム」の表記を見つけられなかったが、土木学会のホームページには、あるにはあった。そんな、ちょっと謎めいた池でもあり、長年、思いを募らせていた。
池の立地としては、僻地ではあるが秘境ではなく、道の駅から直線距離で2km弱しか離れていない。それでも、すんなり行けたわけでもない。悪路、ヤブ漕ぎを想定して、道の駅から小型オートバイ・モンキーで出撃。
周辺にダムに該当しそうな大きな池も見あたらないので、とりあえず目星をつけた池から流れ出しているらしき沢伝いに池をめざすことにしたが、最初の関門は沢の工事。小型ショベルカーとミニダンプで一車線道路が完全に塞がれている。お願いして作業をいったん止めてもらって、モンキーでかろうじて横をすり抜け。クルマならアウトだった。工事のおじさんも、なんじゃこいつと呆れ顔。モンキーの突破力は身軽さだけでない。笑いだ。
その先、道なりに進むと九十九折りの急勾配に。やがて池から離れていった。これは池への道ではない・・。
もと来た道を戻り、なんのことはない、工事現場のすぐ近くまで戻ってきたら、土砂流出の激しい一角に沢伝いの分岐を見つけた。

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牛の池田ダムへのアプローチ路は左。沢も左に折れている。


このあやしげな分岐を曲がったときは、この先に池がある確証もない。そもそも、これが牛の池田ダムなのかも分からない。地図に出ていない池だってあってもおかしくない。
そんなプチ探検も池参りの楽しさ。
やがて眼前に、巨大なダムスペックの土盛り堰体がそびえる。確信する。間違いなくダムスペック。しばし見とれた。
じつはこの池から20kmほど北には、全国で二位の高さを誇るアースダムの大久保山ダムがある。それが頭の片隅にあったからといおうか、「牛の池田ダム」というちょっと変わった名の池参りに少なからぬ威光を及ぼしていたのは確かである。


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じつに堂々たる堰体。巨大アースダム独特のオーラがある
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立派な洪水吐。奥に見える取水設備はフロートタイプか。浮き桟橋が設けられている

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牛の池田ダムではGOPRO HERO7での超広角撮影を試した。一般カメラの焦点距離に換算すると、おおよそ15mmほど。魚眼なのでもう少し広く感じるが、このぐらいの画角がないと、この池は一望できない



マークした場所はアプローチ路の入口(分岐)。