その名も、ザ・池神社。
池神社といえばまず、七不思議とともに語られる奈良の明神池が思い出されるが、瀬戸内海に浮かぶ周囲わずか4kmの小島にすぎない牛島にも、パワーあふれる御神体の池群がある。
それにしてもこんな小さな島に外周1kmほどのみごとな湿原が海に向かって開けているのは、単に奇跡という言葉で済ましていいのか悩む。牛鬼伝説が残る島だが、『まんが日本昔ばなし』で牛鬼が扱われているのは秋田、伊勢(三重県)、島根、岐阜の四話のみだが、四国では愛媛県の宇和島で、牛鬼をかたどった巨大な山車が練り歩く「うわじま牛鬼まつり」が行われている。ほか、高知でも牛鬼伝説が残る。
牛島の名と牛鬼伝説に関係があるのか分からないが、神々の庭という言葉が似合うこの奇妙な湿原には、大小の池や池塘がちりばめられ、奥には、この島唯一の猫額の農地が丘陵に囲まれてたたずんでいる。
湿原に足を落とす山裾には池神社があるのだが、アプローチ路が分からない。空撮では鳥居で存在を確認できたが、奥の本殿は無残に倒壊し、ブルーシートがかけられていた。
牛島へのアプローチは四国の丸亀港からフェリーか渡船で。一日数便しかなく、牛島めあての乗客は釣り人が多くを占める。
待合室と郵便ポストしかない港に渡船が着く。船後方の乗船口ではなく、舳先から下船。島に足を着けたと思ったら、もう渡船は唸りをあげてバックしはじめている。
島を通る道は一本しかないので、ただ道なりに歩くのみ。小さな山を越えて平地に下ると、道に沿って石囲いの小さな池が右に左に姿を見せる。
農業用ため池としては小さすぎる気もするし、生活用水用の池だろうか。水面の小さな波紋の正体を見きわめようと目をこらすと、メダカのようだった。
このあたりは畑と民家が並ぶ島の中心集落。
ほどなく湿原が右手に現れ、小さな水路を橋で渡る。水路の流れ下る先は目の前の海。ボラの群れが水路を行ったり来たり。ときおり銀色の体側をきらりと閃かせている。
目で水路をさかのぼっていくと、湿原の中に小さな水門と池が見えたが、アシに埋もれて背のびをしないと全貌が捉えられない。
空撮で上から見ると、この池には直線的な堤のようなものも設けられている。浮島もたくわえる池塘群は天然のものだと思うが、いちばん大きなこの池には人の手が加えられ、何らかの目的で活用されている可能性もある。
あるいは人工の堤と水門は、高潮などでの海水の逆流から湿原を守るためのものかもしれない。
小さな離島に出現したミステリアスな池群。崩壊した池神社本殿の再興を祈りたい。
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マークした場所に、水門のある池。