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水辺遍路

実踏・日本の湖沼 5,700湖

明神池(奈良県下北山)

みょうじんいけ。
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奈良時代から平成まで。伝説が目白押しの、あまりにミステリアスな水辺。

日本国内に不思議な伝説が残る湖沼はあまたありますが、下北山村の明神池ほどミステリアスな池はそうそうはありません。
奈良時代の役行者が三日三晩の祈祷で池の主を鎮めたという伝説にはじまり、戦国時代には、大坂夏の陣で大坂城が炎上、落城した際に、明神池に伝説の「浮木様(うききさま)」が現れ、水面をぐるぐるとまわったそうです。じつは太閤秀吉が禁を破ってここの木を伐り大坂城の建築資材として使ったとか。浮木様は沈んだ古木が水面に現れる現象ですが、本来は吉事の前兆とされています。ぐるぐるまわるというのは、よほどめでたいことが起こるとき。神木を伐った豊臣家の滅亡を水神が祝ったのだといわれています。

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明神池の伝説がすごいのは、昔話に終わらず、昭和、平成の時代になっても祟りと信じられている死亡事故、不思議な現象、浮木様の目撃談が多数報告されていることでしょう。
国道425号線が池と池神社のあいだを通っていますが、もとはご神体の地ということで、以前は地元の霊柩車はいったん神社の前で止まり、棺は人の手でかついで神社を迂回する湖周路を運び、再び霊柩車にのせていたということです。

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村の公式ホームページに出ている伝説も、池の鯉を釣って刺身にした次の日に倒れてきた重機にはさまれて亡くなったとか、亀を吊した人が翌日、クルマごと崖から転落、死亡したとか、やけに現代的で具体的。これらが「明神池の七不思議」として記されています。
池の成因は河跡湖のようですが、七不思議のひとつにもなっているように、流入河川および流出河川はないのに池が干上がることはなく、昭和50年の事例のように雨が降らなくても池神社の拝殿が冠水するほど増水することもあるようです。もっとも一帯は日本屈指の豪雨地帯なので深い森に蓄えられた豊富な水が水源になっているものと思われます。

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池の岸近くには倒木がそのままで残されています。倒木といえど池の木を伐ることを誰もが怖れている結果ということらしいです。私が印象に残っているのは、池のまわりに立っている木の生え方というか、枝ぶりというんでしょうか。何か妙なものを感じてしまいます。

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池には鯉が泳いでいましたが、慣れているという感じでもなく、かといって寄ってくるという感じでもありません。これが捕ると死ぬといわれる鯉ですね。そういえば静岡県にも「捕ると死ぬ」と看板に明記されている池があります。その名も「大瀬神池」。

bunbun.hatenablog.com

もうひとつ「長門の国(山口県)の七不思議」のひとつに数えられている同名の明神池もありますね。

bunbun.hatenablog.com


鯉や亀のほかブラックバスもいるとのことですが、キャッチアンドリリースでも祟りが危険なので釣りはしないでとの、村の公式見解でした。
池端の池神社前に駐車スペース、トイレ、周回遊歩道あり。

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右は池神社。左は明神池。道路は国道425号。
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トイレのある駐車スペース。少し道を進むと、下北山スポーツ公園の広い駐車場とトイレもある。
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周辺のマップ。下は地元看板、上は水辺遍路謹製。
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マークした場所は下北山スポーツ公園の舗装駐車場。

bunbun.hatenablog.com

【明神池の七不思議】

(出典:下北山村ホームページ)

ここでは昔から語り継がれ、また現代でも目撃されている「明神池」にまつわる様々な「不思議」をご紹介いたします。

<七つの不思議>

1 入る谷無し 出る川無しなのに決して涸れず、水位がひとりでに上昇することがある。

2 神社の前の道も聖域である。

3 池に石を投げると雷雨になる。

4 鯉や亀を殺(あや)めると死ぬ。

5 御神木を伐ると祟りがある。

6 吉兆の「浮木様(うきさま)」が現れる。

7 池の水神(すいじん)「白龍(はくりゅう)」が立ち登る。



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(2011年9月4日 台風12号に伴う豪雨で
床上浸水した「池神社」拝殿)


【1】 入る谷無し 出る沢無しなのに決して涸れず、ひとりでに水位が上昇することがある。
周囲を小高い峰に囲まれた「明神池」は、注ぎ込む谷も出てゆく川もありません。
しかし常に満々と水をたたえ、どんな日照りのときでも、池が干上がったことは一度も無いということです。
ところが明治時代、池の水がひとりでに溢れ出してついには拝殿の階段に到達したことがありました。
村人は「悪いことの前触れ」もしくは「神の怒り」ではないかとひどく恐れたそうです。
また昭和50年(1975年)にも、大した雨も降らないのにどんどん水位が上がり、拝殿まで水があふれたことがありました。
そのときは大学の先生に調べてもらいましたが、やはり原因不明であったとのこと。
ただその調査の際、池の深さは場所によって1.5m~7mと様々で、湖底は起伏に富んだかなり複雑な地形であることが分かったそうです。

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(2011年9月4日 台風12号通過直後の様子。鳥居の下に狛犬がちょっとだけ頭を出しています)

連続雨量700mmを記録した2004年の台風16号のときは
池の水があふれてガードレールの高さになりました。
一方、紀伊半島南部に大きな被害をもたらした2011年9月の台風12号では、下北山村には1400mmを超える雨が降りました。
そのため水位は1.6mを超え、拝殿も床上15センチまで水に浸かりました。
赤い鳥居が池に浮かび、まるで宮島の厳島神社を彷彿とさせます。
(現在、「池神社」の御祭神は宮島と同じ「市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)」です)
普段は草が生い茂っている杉林の間を、大喜びで鯉が泳ぎ回っていました。
まあ、現在は隣の「池の平ゴルフ場」から水が流れてくるため
ある程度増水するのはやむを得ないとしても、拝殿が床上浸水するのは神社始まって以来のことであり、尋常のことではないのは確かです。
一体全体、何の「兆(きざ)し」 なのでしょうか。


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(対岸から眺めた池神社)


【2】 神社の前の道も聖域である


現在、「池神社」の拝殿と「明神池」の間には国道425号線が通っております。
しかしここで不敬なことをしたり、この道を通って遺体を運んだりすると、よくないことが起こると言われておりました。
それで村人は、昔は葬儀の「野辺送り」の際は棺(ひつぎ)を車から降ろし、神社とは反対側の湖畔の道を人力で運んだということです。
なぜこのようなことをしたのでしょう。実は昔は、現在の拝殿のすぐ近くまで池が広がっており、赤い鳥居は水に浸かっていたと言われているからなのです。
すなわち池と鳥居の間の道路はかつての「神社の境内」、あるいは「御神体」の上に作られたも同然だということ。
車で通過するときでも敬虔な気持ちで、軽く一礼してお通りください。

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(古木の生い茂る「明神池」)


【3】 池に石を投げると雷雨になる
池に石や木を投げたり、池の水を汚したりトイレをしたりすると、
晴天であってもたちどころに大雨が降ると言われています。
あるとき池の横を通りかかった旅人が「自分は氏子ではないから大丈夫」と思って石を投げたところ、突然雷が鳴り響き、バケツをひっくり返したような豪雨と強風が吹き荒れて全身ずぶ濡れ。
ひどい目に遭ったということです。

またこのような話もあります。
「池に船釘を投げ込むと龍が現れる」と聞いたある男性が、船釘およそ4キロを持ってきて池に投げ入れました。
するとにわかに空がかき曇り、谷じゅうに雷鳴が響き渡ると同時に水面が波立って、池から巨大な龍が天に上がったというのです。男性は恐怖と驚きで気を失い、その場に倒れ込んでしまったそうです。

たとえ突然の雨にならなくても、石を投げるとその後で転んだり怪我をしたりするなど良くないことが起こると言われています。


【4】 鯉や亀を殺(あや)めると死ぬ
「明神池」は池そのものが御神体であるため、釣り糸を垂れることも船を浮かべることも、また足を踏み入れることもしてはならないとされてきました。
ところがある男性が「明神池」の鯉を釣ったことを、床屋で自慢げに話しました。すると急に祟りが出て病気になってしまいました。どこの医者に行っても治りません。
占い師に尋ねると「明神池の魚を釣ったからだ」と言われました。
そこで神社に謝りにきたところ、病気は嘘のように治ったそうです。

現代でも池の鯉を捕って刺身にして食べた人がいますが、その人は翌日、石を運ぶ作業をしているときに重機が倒れ、即死してしまいました。

また池神社である男性が弁当を食べていると、弁当の匂いを嗅ぎつけたのか池から亀がノコノコと岸に上がってきました。
ところがその男性は亀におすそ分けをするどころか、亀を捕まえて足を紐でしばった挙句、木の枝に吊り下げてそのまま家に帰ってしまったのです!
その人は翌日、山道を走っているときに車ごと転落し、あっけなく亡くなってしまいました。
「明神池」には現在、
密かに放流された「ブラックバス」なども生息しておりますが、「キャッチ&リリース」であっても「池の魚」を傷つけることになります。
釣りは絶対になさらないでください。


【5】 ご神木を伐ると祟りがある

神域の木を伐(き)ると、伐った者はその場で気を失って「100年の眠り」につくとも言われています。
また神社の草木を切ったり採ったりすると、怪我をするなどの天罰があると言われています。
「明神池」を一周する遊歩道でも、池側の木は一切伐ってはならないと言われているため、池に倒れた木も全てそのままにしてあります。
「池神社」の御神木は神社の北20mほどの位置に立っていた
直径3m以上ある大木で、「矢立の杉」と呼ばれていたそうです。それが大阪城の建材にするため、秀吉の命令で伐採されることになりました。もちろん村人は畏れて誰も伐ろうとはいたしません。
しかし秀吉の落とし胤(だね)と言われる「神をも恐れぬ」兄弟がこの地を訪れ、御神木を伐ろうと言い出しました。
ところが斧を入れる度に刃がこぼれてしまいます。兄弟は斧を研ぎながらほんの少しだけ木に切れ込みを入れました。
ところが翌朝、その切り屑がすべて木に戻っていたのです。兄弟は同じように斧を研ぎながら木を削り続けましたが、その翌朝も同じ現象が起こって木は元通りになっていました。
そこでその兄弟は、削った木屑を夕方に焼いてしまうことにしました。これではさすがの御神木も、切り傷を元に戻すことができません。
二人の荒くれ者によって、とうとう伐り倒されてしまったのです。
ただし「明神池」の怒りは、その後別の形で現れました。
「浮木様」の項目をご覧ください。
ちなみにこの兄弟はその後、「明神池」の水を「池原」の集落へ流そうと思い立ちました。そこで池の周りの木を伐り始めたところ、突然池の中央が波立ってきて二人はその場で気絶。目が覚めたときには手にした斧の柄が腐っており、着物もドロドロ、顔は髭だらけ。驚いて村に下りると、「三年」の月日が経過していました。
さすがにこれには懲りて、以後は無茶をしなくなったということです。


【6】吉兆の「浮木様」が現れる

池には長さ4mほどの太い古木が、長年浮いたり沈んだりしていると言われています。
木の上には苔や草が生えていますが、これは「池神社」の御神木だった「矢立の杉」の一部で、「浮木様(うきさま)」と呼ばれています。
普段は見ることができない「浮木様」が現れるのは大いなる「吉兆」とされていて、世の中にめでたいことが起こったときは池の中をグルグル回ったそう。また、その「浮木様」の上に亀が1~5匹ほど乗っていることもあり、これは神様が遊びに出られたものと考えられてきました。
そもそも「浮木様」は大阪城の建材にするために切り倒された御神木の梢の部分である「末木(うらき)」ですから、大阪城に異変や不幸があるときは必ず現れたらしく、「大阪夏の陣」で大阪城が炎上したときなどは、「浮木様」は七日七晩、池を回り続けたと言われています。
神をも畏れぬ秀吉の行いを、「明神池」の神様は決して許さなかったということかもしれません。
このほか「国家の一大事」が起こる前にも、「浮木様」が姿を現すと言われています。
戦前においても何度か目撃されていますし、最近では2011年6月25日の朝にお参りに来られた方が伝説通りの完璧な「浮木様」に出会いました。
それは長さ4mほどの太い木で、上には右手に青草が生い茂り左手に亀が一匹乗っていたそうです。
湖畔に漂っている流木や周囲の倒木は樹皮が剥がれて土色になっているか腐って黒ずんでいるかのどちらかですが、その木は上に草が生い茂っているにもかかわらず真っ白で美しかったということです。
「国家の一大事」、もしくは「類まれな吉兆」と言われていますので
何が起こるか楽しみにしているのですが...。



【7】 池の水神(すいじん)「白龍」が立ち昇る

「明神池」のお膝元、「池峯」の集落に住む人の話です。
家族3人で「池神社」にお参りをしていたところ、突然水面がザワザワし始め池の中央から大きな「水柱(みずばしら)」が立ちました。それはまるで「滝」を逆さにしたようなもので、「龍神が池から飛び立たれた!」と思い、3人で手を合わせたということです。
その不思議な「水柱」を見たことによって、「この世ならぬものが存在する。池には龍神が住んでいる」ということを深く確信したとか。
れっきとした現代の話です。

別の村人によると、ある日「御神事」をしているとき、いつもは静かな池がザワザワと波立ち始め池のほとりの「餌やり場」にたむろしている何十匹もの鯉が大慌てで蜘蛛の子を散らすように逃げてしまいました。
すると見る見るうちに池が泥で濁り、池の半分が真っ赤に染まったのだとか。
やがて池の中央に、「巨大な白蛇」のようなものが現れたそうです。
はっきりと肉眼で見えたらしい。
驚きで立ちすくみましたが、大急ぎで拝殿に戻ってつい先程お供えしたばかりの生卵をとってきて池に投げ入れたところ、池は瞬く間に静かになったということです。
1995年の話です。