水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

大鳥池(山形県鶴岡)

【おおとりいけ / 大鳥湖】
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湖面標高960m。登山路を3時間かけて歩いて行くしかアクセスできない山池でありながら、コンクリート堰体を持つ溜め池でもあるユニークさと、池ヌシのタキタロウという体長2〜3mもの怪魚がもたらすロマンとで、私にとって長らく憧憬の池だった。

 

憧れの大鳥池へ。第1の分岐

国道112号から県道349号へ。この交差点のコンビニで黎明を待つ。
大鳥池に向かうにあたり、ここが最後のコンビニとなる。入漁券も取り扱っているので、ここで購入しておいた。1,050円。むぅ、一日分の食費と酒代が・・これは何としてもタキタロウを釣って池ごはんにしてバベらねば。
そうなんです。愛とロマンの山奥の池だというのに、大鳥池は漁業権が設定されており、タキタロウ釣りは気合と祈りだけではダメで、お金もかかるのである。
そういえば兵庫県に大鳥喰(バベ)池っていう池があったな。関係ないけど。

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第2の分岐。タキタロウ館

大鳥川は荒沢ダムのインレット上流で西大鳥川と東大鳥川に分かれる。
その分かれにある大鳥集落にタキタロウ館がある。タキタロウ館では、タキタロウにまつわる新聞記事や巨大魚の剥製、レプリカなどで、大鳥池のヌシとして君臨するタキタロウについての妄想を存分に膨らませることができるだろう。

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分岐から20km。やがてダート路へ

県道に入ってから20km余。やがて道は未舗装路に。
災害通行止めもしばしばなので、もうホント、ここまで来るのに長かった。
東大鳥ダム、左京渕ダムというダムを通過していく。

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林道の終点、泡滝ダム

ダート路で8kmほど、いや〜長かった。帰路ではミニダンプが隊列を組んで走ったりしているので、スレ違いできず延々とバックしたり。
対向車が来ないことを祈るのみ。
林道終点には泡滝ダム。秘境ダムといっていいのだろう。

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駐車場と登山口

駐車場と簡易トイレあり。
簡易トイレではあるが、きれいでビックリ。レンタル会社が管理しているようで、これはこれでいい民間委託。仕事がしっかりしている。

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登山者用駐車場


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登山口


 

大鳥池への登山

登山客の多くは玄人

登山客はテント泊で以東岳か大朝日岳をめざす玄人がほとんど。これらの登山客にとって大鳥池は、その後背に控える名山への入口にすぎない。
それでも、大鳥池まで直線距離4.5km、徒歩で片道3時間もかかる。ただ、大鳥池までの行程を6合目、7合目と区切ってくれているので、初心者でも心の励みになる。

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最初は歩きやすい渓流沿いの小径

登山口に「バイク・MTB 登山道はご遠慮いただきます」と掲げられていたのも納得。二輪車でも走れるぐらい歩きやすく勾配も小さい。

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片葉のアシ?

これは池伝説でときどき出てくる「片葉のアシ」では??
道の左側のアシだけ片葉で、右側は普通に交互に葉が出ていた。

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吊り橋で沢を二回渡る

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七合目からやっと登山らしく

行程のほとんどは沢伝いで、前半戦はずっとゆるい傾斜。登山らしい登山は七合目以降。
ここから急傾斜が始まり、あちこちから水が噴き出している。ゴアテックスや防水のシューズがないと、かなり濡れるだろう。玄人登山者はスパッツのようなものを足に装着していた。

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滝音が遠のくと

登山路はだらだら〜っと距離をかけてつづら折っているので、歩いているわりには高度が稼げず、渓流の水音がなかなか遠のかない。
ところどころにショートカット禁止の看板。
やっと滝音が小さくなったと思ったら、もう九合目の看板。

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峠から先は下り

大鳥池のヘリにあたる峠から先はゆるやかな下り。水の匂いが近づいてくると、やっぱりワクワクする。

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大鳥池に到着

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大鳥池の設備

タキタロウ山荘

大鳥池小屋(通称・タキタロウ山荘)は夏期は管理人がいて入漁券も取り扱っている。

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マイクロ水力発電と水場

水は常時出ている。堰体からパイプが取り回されていた。

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大鳥池キャンプ場

大鳥池の池畔というよりは堰体下の水路沿いの立地で好眺望はない。

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公衆トイレ

キャンプ場併用のトイレがあり、誰でも利用できる。

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ため池としての側面

登山路で三時間の溜め池って?

大鳥池が溜め池であるということは聞き知っていたが、アクセスは徒歩によるしかなく、しかも山道を3時間も歩かねばならない。
そんな溜め池はいったいどのように造られ、どんな運用がなされているのか、そこのところを自分の目で確かめてみたいと思っていた。
そもそも、本当に溜め池なのだろうか。

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コンクリート堰堤が!

ほんとうに堰堤があった。しかも、かなりしっかりしたコンクリートダムだったのでショック状態。ガクガクブルブル。まさかこう来るとは!
堰体の天端は登山路および湖周路の一部となっていて、時おり登山客が通る。

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由来が記された石碑

なるほど、もともとは天然の土砂堰き止め湖で、かんがい用の補助水源(渇水期に利用する)にすべく、流出部に制水門を設ける計画が明治時代に動きだし、昭和初期に竣工。資材はすべて人力のみで担ぎ上げたという。
また、現在の堤体は昭和時代の改修によるもの。このときの資材はヘリで空輸された。

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登山路の歩きやすさは、工事のなごり?

水門を造る資材を肩に背負って運ぶために、徹底的に傾斜を避けて、だらだらとした登山路になっていたということなのかなと思った。
ベテラン登山者にはかったるいかもしれないが、初心者にはうれしい。

「大鳥湖」という名も

水門を設けて溜め池に改造したのを受けて、大鳥湖から大鳥池と改称したようだ。スペックとしては間違いなく湖だろう。
下の標柱には「大鳥湖登山道」と記されている。

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大鳥池の地形と構造

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吐き出し側

前述したようにコンクリート堰堤で堰かれているところが吐き出しになるわけだが、もとは土砂崩れによる堰き止め湖だったので、その痕跡も合わせて探したい。
下の写真では、堰体下のキャンプ場下流側で吐き出し水路と、別の谷筋の沢(滝ノ沢)が滝のあたりで合流しているのが見てとれる。

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流路は七ツ滝を経て急降下

下の写真で、右側に流れ出した水路は滝で落ちたあとに、中央の山を捲くように左上へと流れ下っている。

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土砂ダム部

右の谷側に向かって湖面が食い込むようにキワキワに迫っているが(下写真)、土砂ダムができたのは堰体のある場所のようだ。

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流れ込み

以東岳に連なる連峰から複数の流れ込みあり。

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三角池

50mほど標高の高い600mほどの地点に三角池(みすまいけ)という小さな池があるが、谷筋は見られず直接的な通水関係はなさそう。

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三角池(右下)と大鳥池

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ロマンのタキタロウ釣り

漁業権が設定・ボート禁止

放流事業も行っていることから大鳥池には漁業権が設定されており、釣りをするには入漁券が必要。これはタキタロウ一本狙いであっても同じ。
ボート禁止というが、過去にゴムボートなどを担いで登山してきた猛者がいたということだろうか。ボート禁止である以上、オカッパリで攻めるしかない。

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ヒメマスを空輸で放流

ヒメマスを空輸で放流したというから豪快な話だ。
放流されたヒメマスは北海道産を養殖したもの。禁漁期あり。でも、これって外来魚では?

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実際に確認できた魚影

水が黒く見えるほど大量の稚魚が浅場で群れていた。マス類の幼魚のようみ見える。繁殖がうまくいっているようだ。
また、別の浅場では10センチ程度のモツゴらしき魚影。

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ものすごい数の幼魚。左下写真はアップ。右下は別の浅場でのモツゴ類と思われる魚
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タキタロウに挑む

マス類は10/1から禁漁期なので他に釣り人の姿はない。
入漁券にはヒメマス対象と雑魚対象というのがあったが、タキタロウ以外はどうでもいいので「雑魚」の券を買った。タキタロウはマス類の可能性が高いが、そもそも正体が判明していない幻の魚なので、漁協によって放流されたマス類と同じ入漁料を払わされては困るけど、混獲する可能性もある。
そこでライギョ狙い用のフロッグ、しかもスイカのデザイン。これ一本で狙うことに。雑魚だから禁漁期は関係ない? 誰かに聞こうにも人がいない。
小魚の魚影は濃いものの、大きな魚は一度も見なかった。
以東岳中腹からタキタロウの群泳が目撃されたという話もあったので、バッテリーの限りを尽くして空撮でタキタロウを探すも、これも成果なし。
釣りはロマンがあるけど、タキタロウに肉薄するには、空撮で湖面の動画を地道に撮り続ける方が確立が高そう。

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タキタロウ釣りの道具と入漁券


 

大鳥池の湖岸(4K動画)


www.youtube.com


 

池ごはん

帰路の水場「ジミヤチ清水」でくんだ水を持ち帰り、鶴岡のスーパーで買った激安ラム肉を炒めて袋ラーメンに投入。

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アクセスデータ(GPS)

左はタキタロウ山荘まで。右は登山口までの往復。

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Googleマップ