水辺遍路

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タキタロウ館の池(山形県鶴岡)


伝説の未確認巨大魚を求めて?

山形県と新潟県の隔てる脊梁山脈である朝日連峰。その山奥にひっそりたたずむ大鳥池は、タキタロウという伝説の未確認巨大魚をめぐって衆目を集めて久しい。
交通網が発達した現代においても、池に行くためには片道3時間を歩くしかない秘境でありながら、ヤマカワ、カワマスの放流も行われていることから漁業権が設定されており、遊漁証さえ購入すれば心おきなくタキタロウと対峙できるのだ。
もうずいぶん前からタキタロウをめざしての釣行が悲願であった。できれば魚探を搭載したカヤックで20gほどのタイラバ、あるいは30g前後のジギングといった、地元で磨いた相模湾の海釣り釣法を試してみたいと思っているが、そうなるとカヤックをはじめとする機材とテント一式を背負って登攀し、湖畔で最低一週間は粘りたい。まさに夢だが、なみならぬ体力がいる。敷居が高くてなかなか実現できないまま、齢ばかり重ねるばかり。
まずは第一歩として山の麓にあるタキタロウ館に赴き、情報収集を行なうことにした。
いざタキタロウ館へ。建物の前に池がありイワナ釣り堀になっていた。ここで手軽にイワナ釣りもできるが、狙いはあくまでタキタロウ。ぐっとガマンして館内に入る。

タキタロウは必ずしも未確認生物ではない。

伝説が先行する「タキタロウ」だが、タキタロウ館の展示物をじっくり見ていると分かったことがある。タキタロウという名前から、伝説の主、つまり新潟県糸魚川の高浪の池で話題になった「浪太郎」のような一代かぎりの固有名詞だと思っていたが、そうではなく、「タキタロウ」というのは大鳥湖の固有種一群を指す名称であることが分かった。
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そもそもタキタロウが大きく脚光を浴びたのも、昭和57年7月に地元主催で登山していた一団が、以東岳の中腹から双眼鏡で2mほどの数十尾の魚群が泳いでいるところを目撃したところがから始まっている。
その後も、タキタロウの写真、動画、生け捕りの話も出ている。なるほどタキタロウを釣るために必要なのは奇跡ではない。信念なのだ。
館内にはタキタロウの剥製が展示されている。と思ったらレプリカだった。


タキタロウを釣るためには祈りは必要だが、基礎知識もおろそかにしてはならない。館内の資料からタキタロウ捕獲の基本を学ぶ。過去の調査の方法、経緯などが詳細に記されていた。熟読。


大鳥池の湖底の模型。急深で68mもある。通常の淡水釣法ではありえない深さだが、岸から1kmも出れば150m〜200mにもなる相模湾からすれば、けっして深い水深ではない。むしろタイラバやジギングでいえば絶好の水深だ。あとはこの発想と自分を信じきれるかどうかである。


過去の捕獲作戦で使用されたヤナ。これは大きすぎてビビった。さすがに相模湾でも2mの巨魚は揚げたことはない。


とはいっても、そもそも大鳥池にたどり着かねば話にならない。正確なコースマップ。今回はこれが何より重要。


タキタロウ館は入場無料。


駐車場。

タキタロウと大鳥池

朝日連峰の山麓にある周囲3.2km、水深68m、標高960mの天然湖。成因は山体崩落による堰止湖と考えられているが、昭和8〜9年に地元土地改良区が利水のためコンクリート製の制水門を築造し水位が3m上がったという記録もあるので、正確には天然湖をベースとした貯水池ともいえる。
明治から大正にかけて数万尾ものヒメマスを放流した実績があり、さらに昭和になってヤマカワ、カワマスの放流とともに漁業権が設定された。この漁業権設定以前にタキタロウが確認された記録もあることから、私見ながらタキタロウは原生イワナと放流されたヒメマスとの交雑種ではないかと推察される。
タキタロウに関する大規模調査としては、先述した登山パーティーによる目撃証言後、昭和58年から60年にかけてソナーなど当時の最新技術を用いて行われた。
三年におよぶ調査の末に70cmを越える大型魚が捕獲されたが、これは専門家の鑑定でアメマス系ニッコウイワナ、あるいはオショロコマに近いエゾイワナではないかとされた。ただ従前のタキタロウの目撃証言、捕獲記録から得られる特徴とは一致せず、調査で得られた魚はタキタロウではないという見方もある。

今なおロマンをかきたてるタキタロウ伝説。

かつては女人禁制とされてきた大鳥池は、ブナ原生林に囲まれて今なお秘境の雰囲気を漂わせる。
体長は2mから3m。おそらく日本最大の血統であるイトウの血は入っていない。顔はウサギのように三ツ口に割れ、下顎は上顎に深く食い込む。体側の文様ははっきりせずナマコのような強いぬめりをもち、くびれのない三味線バチのような尾びれ。
特徴を列記するだけでも目まいがしてくる。
いったいタキタロウとは何者なのか。

伝説とはいってもその目撃証言は大正時代からあり、実際に食べた人もいた。生け捕りして生かしておいた例や、ホルマリン標本、ビデオ映像、写真などもあり、かなりリアリティはある。
過去にテレビ朝日やNHKをまじえた調査も行われており、1982年の調査では体長70cmの大イワナが捕獲されたがタキタロウとの関連は特定できなかった。2014年にもゴムボートによる調査が行われたが確たる成果は得られていない。
現在でもロマンを求めてタキタロウを追う釣り人がおり、一般でも遊漁券を買えばチャレンジできるのがうれしい。
10月1日から5月末までは禁漁期間。遊漁料1,000円。
遊漁券と登山届けは、登山口の朝日屋で。
タキタロウをめぐっては『釣りキチ三平』にも登場。



 

モンスター魚のロマン

タキタロウはともかく、子どものころに会ったメーター級のライギョを求めて旅する私も愛知県で巨大魚の写真を偶然おさめたことがある。そのときはただ、トンビが水面近くに寄った瞬間を捉えたつもりだったが、あとで写真を見て仰天した。トンビが水面に近づいたのも、魚影を狙ったのだろう。トンビが羽を広げた長さは平均でも150〜160cmというから、このモンスターの巨大さは。

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2021年に大鳥池に会えた!

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マークした場所が登山口となる泡滝ダム。駐車場あり。大鳥池まで直線距離4.5km、徒歩片道2時間半。



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