おくさるだむ。
北海道電力が所管する水力発電用の重力式コンクリートダムであるが、北海道きっての秘境ダムであり難敵ダムでもある。
まずその立地。日高山脈を横断する豪快な日勝国道で山岳深くへといっきに突入。国道から分岐するウエンザル林道の起点からダート路を9kmも走った先にあるという。現実には林道起点に入ってすぐに一般車両通行止めゲートが待ち構えていて、足止めを食らってしまう。
ゲートの形態から徒歩や自転車は問題なさそうだったので登山準備。釣り具と空撮機材を背負い、ストックのゴムキャップをはずし武装する。なんせ日高は北海道でも羅臼と並ぶ屈指のヒグマ密な山地。
ゲートを通ろうとしたとき、北電のクルマが来てゲートを開けた。別に不審がられるわけでもなく、あ、釣りの人ね、ぐらいの目で見られただけ。よっぽど乗せてください、帰りは歩いて帰りますんでと土下座しようか、いや、ただの土下座じゃだめだ、水たまりに顔を突っ込んで、と水たまりを探しているうちにクルマは行ってしまった。
歩いてみればどうだ。フツーにクルマで通れるフラット林道。ヤブ漕ぎをするわけでもなし、道なき道をコンパスたよりに、ってわけでもない。なのに、ただゲートで一般車通行禁止になっているだけで、難関ダムというのも何だろう。でも、ここは日高。ヒグマの多発地帯。往復18kmを歩くのは、かなりの度胸がいる。
新鮮なヒグマの糞を見たら引き返そうと決めて、2kmほど進んだところで、一つ目のヒグマウンコ。これは、干からびていたので、そのまま進むものの、さらに行くと今度は鹿と遭遇。しかも、相手はいっこうに、どこうとしない。なめられている。ビビっていることを完全に読まれている。
人類の尊厳を回復すべく、文明の利器たるドローンを離陸させて攻撃かましたろ、ひひひ、と思ったら、逃げた。こちらの不敵な空気を瞬時に察する彼らの野性本能には、いつも感心させられる。


マークした場所はアプローチ路入口。