香川用水調整池。
大人の事情? ダム名を持たないのにダムカード。
日本一雨の少ない香川県の水道事情はやや特殊。隣県の徳島県を流れる吉野川の池田ダムから分けてもらった水を、総延長106kmもの導水路で香川県全体に広く引っぱっている。
利水権と分水嶺を飛び越え、これほどの幹線水路が県をまたぐことは異例といっていいだろう。香川生まれの私も小さいころ、渇水で他県に長期疎開した経験をもつが、香川用水が稼働する前の水事情はじつに厳しいものがあった。
他県から融通してもらった大切な水を無駄なく効率的に使うべく2009年に竣工したのが、堤高25mのダムスペックを満たすアースダムがかたちづくる香川用水調整池(宝山湖)である。
用途は渇水など緊急時の水道水源。無尽蔵に隣県から水を分けてもらうわけにはいかない。いざというときのために、日ごろから少しずつ水を貯めるのが目的の裏方的なダムである。
また、ダムカード配布対象ダムでありながら、ダム名はないという異色の存在でもある。やむなくダムカードには「香川用水調整池(宝山湖)」と池名が記載されている。
隣県から分けてもらった水で「ダム」を造ったとなれば、反発を越えて炎上するかもしれないという大人の事情もあるのだろうか。「貯水池」とはいわず「調整池」を正式名称にあてているあたりにも大人の配慮が感じられる。
池は大きな石を敷き詰めた石垣のような岸が半周ほどを占める。しかし石組護岸の傾斜はきわめて緩やかなので、独特の景観だ。
釣りなど湖面利用は禁止されているが、湖周路を使って行われるみとよサイクルロード・宝山湖大会は2019年には第十回大会を迎える。
駐車場、トイレあり。
マークした場所は駐車場。