水辺遍路

訪れた全国1万1,450の池やダムを独自の視点で紹介

西向沼(山形県米沢)


米沢盆地の扇頭でアイヌ伝説を秘めた沼

米沢盆地が西吾妻山に向かって収束する扇頭部に、ちょうど左右の門兵のように二つの池が縄張りを構えている。
右翼の水窪ダムに対置されているのが、ここ左翼の西向沼。西吾妻スカイバレーへと向かう県道か分岐するアスセス舗装道を上って行った先に、沼を中心とした小公園が待っていた。公園は米沢市政100周年を記念して整備された。
しかし公園っぽい雰囲気はまったくなく野生的なこの沼。アイヌ伝説も影を落とす。

西向沼の形態・景観

斜平山(なでらやま)と西向沼

斜平山は西向沼わきの栃窪山などを含む山々を含めた山塊の総称で、米沢市街地を見下ろす前屏風のような低山で「やまがた百名山」にも選定。
この山の断裂構造について地元の米沢中央高等学校・科学部が「斜平山の断裂構造」という考察を行っており、この中でたびたび西向沼への言及もあった。

「斜平山の断裂構造」米沢中央高等学校 科学部

西向沼の成因

斜平山を割る沢の本筋からは少しはずれた位置、三郎沢山と栃窪山にはさまれた鞍部に沼が形成されており、明瞭な流入部が見あたらないことから、湧水を水源とする天然湖と思われる。
成因としては堰き止め湖か断層湧水湖であろうか。
ただ、山形県のオフィシャルため池データベースには堤高1.7m、堤長18mの溜め池として登録されており築造は昭和時代となっている。

西向沼の地形的特徴

沼の東西を三郎沢山と栃窪山にはさまれてはいるが、南北の両面は谷となって落ちている。
低山ではあるが稜線上の頂上沼沢に似た特徴がある。


(地理院地図GLOBE)


接続水路と橋

沼の南東部に沼と接続する水路と橋があったが、吐き出し口とまでは特定できず。
対岸の北西側にもパイプで人為的に水を流しているとの情報が前出の論文の中にあった。次に行くときに流入口の有無と合わせて確認したい。


湿原

沼の南側は吐き出し側かと思ったら、湿原状になっている。通常なら流れ込み側が湿原になるのだが・・。


 

西向沼の動植物

世界最小のトンボであるハッチョウトンボ、トウホクサンショウウオ、モリアオガエル。
モウセンゴケなど食虫植物や、氷河時代の生き残りのミカズキグサやミツガシワ。コウホネ。





 

西向沼の施設・設備

縄文時代前期遺跡

沼の北西岸側の平坦部に遺跡。太古から人の営みがあったとすれば沼もそのころにはすでにあった?


駐車場、トイレ

トイレと駐車場はいずれも道沿いにあるが、少し離れている。


湖岸遊歩道・ベンチ・木道




案内板

アイヌ伝説についての言及はあるが内容までは記されていない。ネットでも情報なし。気になる。


 

米沢盆地の眺望

展望台からは米沢盆地を一望できて爽快。




 

西向沼へのアクセス

その名も林道 西向沼線は1.5車線中心の全線舗装路。




 

マップ

現地案内板のマップ


Googleマップ

マークした場所は公衆トイレ。