地下ダムは地下ダムでも究極のステルス性
世界で初めて宮古島に実装されたのが「地下ダム」というタイプの貯水池。ここ鹿児島県の離島である喜界島でも島民悲願の大事業として巨大地下ダムが竣工したと管理事務所の碑文にあった。
しかしダム事務所からどこを見渡してもサトウキビ畑が広がるばかりでダムらしきものは片鱗さえも見えない。地下ダムといえば、それなりに見どころがあるものだが、じつは喜界地下ダムはこのステルス性こそが「見どころ」なのである。
自然環境に対する改造や負荷をできる限り軽減するため、喜界地下ダムでは建設時からトンネルを使ったというのだ。なるほど、ここでは痕跡さえ感じさせない究極のステルス性を味わおう。
通常の地下ダムは
宮古島の地下ダムに代表されるように、水位を確認するためのダム設備があったり、ダム軸が公園化される事例や、久米島のように表層水湛水型の地下ダムなど、何らかの形で地下ダムの存在を感じられるものが多い。そういったものを見たあとで喜界地下ダムを見ると(見えないけど)、ちょっとビックリする。
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地下トンネルから地下ダムを見学
翌日、出直してみたところ、地下ダムを管理する土地改良区の事務所に声をかければ地下トンネルの見学をさせてもらえた。ダムカードは在庫切れとのこと。(2022年11月現在)
地下ダムの地形
段丘状の山と平地が広がり地下ダムにはうってつけの地形。
高台にはポンプで組み上げたファームポンドと給水所があり、ちょうど農家の人が水をくんでいるところを見ることができた。
世紀の大偉業
「有史以来、夏の干天に悩まされた島の農業・自然が、今変わろうとしている」から始まる碑文が何か勇気を与えてくれる。
この事業は、外海にあるこの島に、通常ダムとは異なり、自然も土地も原形のままに、地下に膨大な水を貯留し、島全体の畑に水を届けるという壮大な世紀の大偉業であり、私たち町民に大きな希望と勇気を与えた。
「壮大な世紀の大偉業」というところが特によい。
じつは江戸時代には、喜界島民は豊かになろうと心がける気持ちが弱く、産業に励む者はまれ、と薩摩藩の役人がリポートしている。
漁業についても好漁場が目の前い広がっているにもかかわらず、沖縄の糸満から漁法が伝わるまで島民で漁業を生業にする者はいなかったとか。なんとなく生きる。いい感じ。
今では地味ながら白胡麻の生産が日本一。島酒の黒糖焼酎も地元で材料となる作物を育てるなどチャレンジが続けられている。それらも地下ダムが支えている。
2022年、現在、第二地下ダムの建設にむけて準備が進められている。
島の酒と酒場
喜界島の水の恵みの結晶といえば酒。
喜界島には酒場街というようなものはないが、地元の人が長く愛してきた居酒屋がぽつぽつと点在。たたずまいはお店というよりアパートだったり民家だったり。そんなところにも島旅情があり、お隣の奄美大島の酒場街も楽しいが、喜界島の島感あふれる居酒屋もいい。
島酒の供には夜光貝がたまらない。