工業団地の中にある調整池。
そういってしまえば、ただの造成調整池だが、この池の持つパワーは調整池という言葉におさまりきらないものがある。
池底に設けられた常時湛水域に鯉が泳いでおり、調整池の敷地全体をくまなく歩ける開放性だけでも特筆すべきことであるが、この池でひときわ目を惹くのは、調整池としては当たり前の設備の特異な造形。
水の流入口はまるで戦場のトーチカを思わせる異様な外観。
一見、平穏な池底の緩斜面の途中に、にょっきり顔を出す排水口のオリフィスは、203高地の要塞のようだ。
戦場の跡地に残されたような戦争遺構のような造形は意図してのものだろうか。
オリフィスのスクリーンがまるで獰猛な捕虜を隔離する不穏なオリのように見えてしまう。
よく見れば、常時湛水域のために小型の堰と専用の洪水吐も用意されていたりする周到さも。
多くを語らない池ではあるが、設計者の思想を聞いてみたいものだ。