その池の姿が見えた瞬間、思わず嬉しくなった。宅地化の波が迫ってきていることもあり、こんな素朴な池がたたずんでいるとは予想していなかったのだ。
谷戸の一角を浸す湿地状の池で、一本橋の渡された島に質素な社殿が立っており、弁天池の基本スタイルを持ちつつも、よく見られるような赤い太鼓橋などではなく、やや崩れかけた沈下橋のような橋がこの池の個性。
谷戸の窪地にあることから、しばしば道路側まで冠水するという。そんなときはそれこそ橋も完全に沈下し、弁天島は離れ小島になる。名こそ浮島だが、木の根張りが島を釘付けにしていそうな感じだ。
明瞭な堰体構造が確認できないが、形状からまず人工の溜め池と見ていいだろう。池下の農地の水没対策で盛り土した結果、堰体が不明瞭になったと思われる。ここの部分の岸には洪水吐、オリフィス、水門などの人工設備があった。
魚影は濃く、鯉のほかヘラブナの姿が見られた。池の周囲には発砲禁止、立入禁止などの看板も。
沈下橋の延長線上、池のかたわらの斜面を上がったところに、石造りの鳥居があった。