日本最西端の池をめざして(1日目)
2020年の日本最西端の島・与那国島での島池めぐりでは、どうしても明らかにしたいものがあった。「日本最西端の池」の特定である。
この島を訪れる観光客なら「日本最西端の碑」に足を踏み入れずに帰る人はいないだろう。この島にとって「日本最西端」は、良かれ悪しかれアイデンティティーそのもの。
日本最西端の橋、日本最西端のポスト、日本最西端の自販機、日本最西端のレンタル釣具屋などは紹介されているというのに、「日本最西端の池」について採り上げられた形跡がないのはどういうことだろう。
しかも、それは隠れ池などではない。圧倒的な存在感をもって湖面を広げている。
それが、どういうわけだろう。最西端の碑が立つ西崎(いりざき)近くに周囲長900m級の堂々たる湖沼があるにもかかわらず、地図には池名も記されていない。
調べてみて「久部良ミトゥ」という天然湖沼であることが分かった。
ミトゥ!
およそ日本全国8千近い池をめぐってきたが、池の呼称として「ミトゥ」という名は会ったことがない。正直なところ、何かの間違いではないかと半信半疑でありながら、「ミトゥ、ミトゥ」と連呼しながらひとり踊り呑んで狂喜乱舞していたが、そんなことをしていてもラチはあかぬと気づき、正気を取り戻した勢いにのって現地に赴いた。
いざ。
久部良ミトゥは正真正銘の最西端の池なのか?
久部良ミトゥは「日本最西端の湖沼」と呼ぶにふさわしい、素晴らしい池だった。
しかし、それで両手を挙げて泡盛を酌み交わすのはまだ早い。久部良ミトゥから、日本最西端・西崎の先端まではおよそ1.2kmあり、この1km区間の台地には地図にも出ていない秘池が潜んでいる可能性は排除できない。
スポーツ中継のビデオ判定のような心持ちで航空写真を睨む。久部良ミトゥよりもわずか西寄りに池のような影。その差、50m〜100m。
さらに周辺には、海岸段丘上の草原の中に、ぽつぽつと複数の池候補が。
湿原の点綴する池塘のように見える。
いざ、現地に立ってみると・・。
仔馬が寝ていた。
そう。航空写真で、ぽつぽつとあちこちに池塘のように見えた影は、草木の群落だったり、寝ている馬であったり、山盛りの馬糞だったりが正体なのだった。
でも、あきらめなくてよかった。よろよろとママチャリを漕ぎながら目を血走らせていると、鳴呼、あったあった。湧水の泉のような池が!!
こ、こ・・これが、真のまごうかたなきリアルかつマーベラスな日本最西端の池なのか・・。膝がガクブルしたのは疲労のせいだけではなかったろう。
跪(ひざまづ)きたかった。しかし、膝がまったく曲がらなかった。宿のおかみに、さんざんやめとけと言われたのに、強がってママチャリで島一周を強行したツケが、ここにきて。
それにしても、ここは海岸段丘の上。こんなところに湧き水?
木々の群落は窪地に生えているものも多く、もしかしたら昔はこんな池塘がもっとたくさんあって、草木が生えて今の姿になった?
とにかく、この池が最西端なのかは宿に戻って、写真に刻まれたGPSの位置情報を航空写真の上にのせてビデオ判定をする必要があった。
その夜、確かに久部良ミトゥより西であることは確認できた。しかし同時に思いもよらぬ見落としを発見。
もうちょっと西、より明瞭な池らしきものが・・。
2日目につづく
↓
bunbun.hatenablog.com
地図にはもちろん池は出ていません。航空写真に切り替えても、はっきりとは分からないと思います。