【くぶらみとぅ。久部良ミット、久部良ミットゥ、久部良ミット湿地帯】
東京から2千キロ。これぞ日本最西端の天然湖。
この素晴らしい池を紹介できる日が来た。遠くまで来たものだ。
これぞ、日本最西端の天然湖沼。
その名も、久部良ミトゥ!
小さいながらも豪快な地形の久部良岳の裾を浸す湖周長900mの瞳。学問的には「久部良凹地」「久部良ミット湿地」という地形に属する。
湖面に浮かんだ小さな島は野鳥のよきねぐらになっていることだろう。一帯は環境省の野鳥保護区にも指定。時折、水面を割って魚が波紋をつくる。
水質はややマディー。流れ込み側には沈砂池が設けられているが、それでもいくらか赤土が流入しているのだろう。
岸はほぼ全周にわたって植物群落で覆われている。南と西は樹林、流れ込みのある東と北は灌木および草が繁茂。一部には水生植物群落も見られた。
岸から湖をよく見渡せるのは南側。生息魚類を確認したいところだが、陸釣りはウェーダーでもなければ、やや厳しそう。
それにしても、どうして久部良沼でも久部良湖でもなく久部良ミトゥ?
与那国島に、他にミトゥ(ミット・ミットゥ)と付く池は見あたらないし、日本で唯一だろうか?
「ミトゥ」とは汽水湖の意味だそうである。
そっけないところがまたよい。最西端の池でありながら観光要素皆無の野性味。
駐車スペースも遊歩道も展望デッキも何もない。農地と山と海にはさまれた池。通るクルマといえば農家の軽トラぐらい。
そんな中で唯一、人工物で目に止まるのは「国指定与那国鳥獣保護区」の案内坂。立てたのは環境省。
この案内坂には「ミトゥ」ではなく「久部良ミット」と記されている。
以下、環境省の鳥獣保護区の資料から引用。(太字は筆者が施した)
地形地質等鳥獣保護区の東部から南部にかけての海岸線は急峻な断崖を形成して深海に接している。島の中央部は宇良部岳、久部良岳、与那国岳などの山系が走っている。宇良部岳山頂付近は山地急傾斜が占めており、山頂から北東斜面は丘腹・丘麓緩斜面である。久部良岳も同様に山頂付近が山地急傾斜で占められており、北東及び南東斜面は緩やかな段丘となっている。また、久部良岳の西部に隣接する久部良ミット湿地は、南側の一般斜面、北側の段丘面、東側の谷底低地に囲まれた板干瀬(板干礁)となっている。また、南部に位置している樽舞湿原は、南側の急斜面と北側の谷底低地に挟まれ東西に延びる板干瀬(板干礁)である。
地質については、東海岸は現世サンゴ礁堆積物、宇良部岳・インビ岳・久部良 岳は八重山層群、ティンダハナタ東斜面は八重山層群と琉球層群琉球石灰岩、宇良部岳北及び東は段丘堆積物、与那国岳山麓は八重山層群と琉球層群琉球石灰岩と段丘堆積物、久部良ミット湿地は与那嶺層粘板岩、樽舞湿原は段丘堆積物から成る。
植物相の概要東海岸から南海岸にかけてアダンーオオハマボウ群落や牧草地、宇良部岳は山頂がガジュマルークロヨナ群集、山麓はリュウキュウガキーナガミボチョウジ 群落、インビ岳は山頂から西は牧草地、東はヤワラケガキースダジイ群集、北はリュウキュウガキーナガミボチョウジ群落、久部良岳はビロウ群落、与那国岳山麓はリュウキュウガキーナガミボチョウジ群落、南に常緑果樹園、西にヤ ワラケガキースダジイ群集、久部良ミット湿地は開水面の縁にヨシクラス、樽舞湿原はヨシクラスが分布している。
<国指定与那国鳥獣保護区 指定計画書(環境省案)>