水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

灘仁頃ため池(仮称)(兵庫県南あわじ)

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淡路島最南端の溜め池を求めて。

日本一のため池の島、淡路島。
島にある2万3千もの溜め池の中でも、最南端にあるのはどんな池だろう。そんな思いで、めぼしい池を求めて海岸を走った。
まず淡路島の最南端はどこか。
地図上でもそれと分かる潮崎という岬がある。しかし岬へと通じる車路はなく、まとまって人が住んでいる気配もない。
集落は、この岬から1.5km東にある灘仁頃という漁港。そもそも溜め池は人が水を利用するために造ったもの。廃村といった事情を除けば、人の生活がないところに溜め池はない。よって灘仁頃を潤す溜め池があれば、それが淡路島最南端の池の可能性が高い。
航空写真で確認すると、猫額の集落には段々畑もあり、ヨシ! 海岸段丘の上に小さな池らしき黒光。これは溜め池の可能性が濃厚だ。
現地へ行くと海岸沿いの道はけっこう高いところを通る1.5車線。
300m、200m・・おめあての池が近づいてくる。この瞬間はいつもドキドキ。

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海岸沿いの道路を走っていると、あやしい入口


徐行しながら進むと、道幅が広くなった離合スペースに軽トラの駐車痕。
ウシャー!! ますます濃厚な溜め池の香り。溜め池は何かと管理が必要なので、狭苦しい場所でも軽トラ程度は駐車できるスペースが設けられていることが多い。
しかしここから池の姿は見えない。ヤブの奥へと通じるトンネルのような踏み跡。穴の奥には、水面らしき深淵がのぞいている。この瞬間、ゾクゾク。
身をかがめてトンネルをくぐると、キター。

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厚みのある木々の庇(ひさし)が濃い影を水面に落とし、ヒシモとショウブが生命感を添えている。
明確な堤構造が見てとれる。けっこう堤高はありそうだ。法面からは土管が突き出ていて、そこから細身のパイプが出ている。サイフォン式の取水設備と見てよさそうだ。
名や由来を示すものは現地には何もなかったが、道路から堤に向けてアプローチする踏み跡が濃かったことや、立地的にも構造的にも溜め池と確認できたものとしては、私の知る限りこの池が淡路島最南端である。
周囲にもいくつか溜め池はあるが、どの池も農地が広がる北に向かって開口している。この池だけは唯一、海側に開口しているところに、また惚れた。

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堤に穿たれた土管と鉄パイプ。


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堤の法面


マークした場所は池への入口。地図には池としては記載されていませんが、航空写真に切り替えると池を確認できます。