せんがりだむ。千苅貯水池公園。
オフセット感がカッコいい、大正時代に築造された石造りの土木遺産。
大正時代に築造された石造りの重厚な千苅ダムは「ダム」ではなく「堰堤」と呼びたくなる。横一列に並んだ日本最古のスライドゲートは左岸側にオフセットされ、この左右非対称がダイナミックな地形とあいまって独特の魅力を放っている。近代土木遺産にも選定。
神戸の水道水源でもある貯水池は細くのたうったヒドラのような形状で、インレット側には北摂里山街道という県道が通っている。「千苅貯水池」のほか、「千苅水源池」「千苅貯水場」という呼び方もある。
ダムへの謁見はそれなりの手順を踏まないといけない。
県道からダムへの分岐路へと入るとすぐに福知山線の線路を渡る。沢沿いの狭い道を慎重にマイカーで進むと、およそ2kmほどゲートに遮られる。あまりにいかめしく、これで獄吏でも立っていたらゲートというより監獄の門扉だ。しかし門の奥にあるのは監獄ではなく、千苅貯水池公園。桜の季節だけ獄門が開かれ、一般開放される。
このゲート前に通年開放の駐車スペースがあり、よく見ると堅牢な塀に沿って遊歩道がのびている。足もとの小さな「近畿自然歩道」の標柱がなければ、ただの畔道(あぜみち)にしか見えない。ここを沢伝いというか、塀伝いに歩いていくと500mほどで古城のような堰体を正面に見据えることができる。さらに左岸側の山を高巻いて堰体上から湖畔路へと近畿自然歩道がつづく。
総延長3千キロに及ぶ近畿自然歩道の一部になっていることで、土砂崩れなどをのぞけば、堰体へはいつでもアプローチできる。もしこれがダム管理道だったら、これほど自由に近づくことは難しかっただろう。
ダム湖のうち北摂里山街道以南は釣り禁止。
マークした場所は駐車場。ここから堰体までは徒歩。