水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

御嶽 二ノ池(長野県木曽)


日本一、高い所にある山池。

やっと会えた。
日本の湖沼研究の父ともいえる田中阿歌麿先生も研究対象にした日本最高所の山池であり、戦後もっとも多くの犠牲者を出した噴火災害の現場でもある。
3千メートル峰である百名山・木曽御嶽の豪壮な頂上の一角、標高2,905mにある二ノ池は、そのほとりに山小屋を置き登山客に人気のオアシススポットだった。
2014年、予兆もなく噴火したのが紅葉の週末、それもランチタイムだったことが被害を大きくした主要因となった。
それにしても何と荒涼とした池だろう。かつてエメラルドの水をなみなみとたたえていたことが信じられない。これが噴火の傷跡なのか、碧の池は再生するのか。

山小屋のわきが池の流れ出しとなっている。


 

かつてはエメラルド色の池

もともとは三ノ池と同じくエメラルドグリーンの水をたたえ、最大水深は3mほどもあり、山頂に点在する山荘の水源にもなっていたそうだ。干上がって白骨をさらしたようなむきだしの底は、池としての末期の姿だろうか。
一日の水位差が40センチもあったというが、確かに水位が変化した痕跡は濃い。


 

水の入口と出口

火口壁を一枚経て一段高い位置にある一ノ池の壁側から流れ込みがあるものの、なかば干上がった白骨のような池底を、幾筋もの流れの跡がのたうちながらウグイス色の水面へと導かれている。
山小屋のかたわらに小さな木橋があるが、ここが池の吐き出しのようだ。離れたところから見ると、まるでスリ鉢の注ぎ口のような流れ出しから山肌を削り、やがて大きな谷筋となって山裾へと下る。
湛水面はかなり小さくなっており、すでに雨後しか湛水しなくなった一ノ池と同じく、それほど遠くないうちに消失しそうである。

二ノ池の最深部のわきにある吐き出し


流れ込み側


水の流れ込み側。小さな木製の橋が架けられている。


湛水面はごく一部という減水状態だった


 

池が三つに分離した形に

訪れたときの二ノ池は、大きく三つの池に分離している状態だった。

二ノ池の隣にある小さな池。


 

池畔の植物

岸にわずかに生える植物もあったが、ほとんどは岩と砂礫。
隣にある「賽の河原」よりも、よほどこちらの二ノ池の方が賽の河原感がある。



 

変化に富んだ豪壮な地形

巨大な山頂に小カルデラをもった独立峰であり、カルデラ内に一から五までの名の付いた5つ(場合によっては6つ)の火口湖と賽の河原という平坦地がある。
最高峰の剣ヶ峰をはじめ、峰の多くは火口壁の一部。これだけ変化とボリュームに富んだ「山頂」をもつ山は木曽御嶽をおいて他にない。


 

現地マップと案内板

2020年に王滝側からの登山路が開放されたが、まだ規制がかかっている区間もあり、行く前には最新情報を確認した方がよい。




 

アクセス

二ノ池は御嶽山の9.5合目あたりにあるので、登頂できる装備が必要であるが、霊山として昔から地元では老若男女問わず登ってきたので、時間はかかるがハードすぎるということはない。
登山ルートは複数あるが、6.5合目までロープウェイを利用するアプローチルートがもっとも楽。
行程の詳細は一ノ池のページに記載。


bunbun.hatenablog.com


 

田中阿歌麿先生の著書

『趣味の湖沼学』というタイトルが素敵。先生がこの本を執筆してから百年になりますが、湖沼が趣味として認知される日は来るのでしょうか。お導きを。


 

Google マップ