本来なら、日本一の標高にある池だったはず
3千メートル峰である百名山・木曽御嶽の豪壮な頂上には一ノ池から五ノ池まで五つの爆裂火口湖(マール)があるが、なかでも最高所に座するのが一ノ池である。
その標高は2,990m! つまり、もし何らかの理由で水深10m分の水がたまれば、日本唯一の3千メートル山池になってしまうというロマンを秘めている。
池に水がないために
池という名は付いているものの、深田久弥が『日本百名山』を執筆した半世紀以上前の時点で、すでに一ノ池には水がなかったことが記されている。
しかし現在、日本最高所の池である二ノ池も水が少なくなって、見た目は一ノ池とそっくり。正直、水たまりがあるかないか、ぐらいの違いしか感じられないだけに、一ノ池が気の毒だ。
ぜひ一ノ池を日本最高所のロストレイクとして認定してあげてほしいものである。
一ノ池の水は二ノ池へ
一ノ池に注ぎ込んだ水は、火口壁の割れ目からそのままニノ池に下る構造となっているようだ。注ぎ口のように火口壁が切れ込んだ吐き出し口をコンクリートで堰き止めれば、あるいは池として復活する可能性も?
そんなことは邪道と思われるかもしれないが、消失しそうになっている天然湖を人工的に救っている事例もないわけではない。
下の写真を見ると、一ノ池と二ノ池の位置関係がよく分かる。
木曽御嶽の山池めぐりマップ
池の位置関係と高低差をクローズアップして下描きした。
本番はもう少し現地調査を進めてから描きたい。
池までの登山行程
御岳ロープウェイ山麓駅(6合目)
アプローチ路は1.5車線だがハードではなく夜間でも走れた。山麓駅前には比較的大きな無料駐車場があり前泊のクルマ多し。
ロープウェイ乗車
ロープウェイといってもゴンドラリフトなので、定員いっぱいになって次の便まで待たされるようなこともないので、のんびり待てる。
上の駅へ(6.5合目)
ロープウェイを降車すると、すでに標高2,000メートル越え。
ここから七合目をめざして登山開始。しばらくは平坦な道。
登山路
長く信仰登山の霊山だっただけあって、登山路はよく整備されている。ここを裸足で登る人も。
女人堂(8合目)
休憩スポット。山荘の横には石仏群。
この日は登山している間、ずっと山頂近くの上空をヘリが旋回していて、じつに五月蠅い。ひとときでいいから静寂が欲しい。ヘリの音は「五月蝿い」という言葉がぴったり。
ここにあった案内板に以下の記述。
「三ノ池は周囲四粁、海抜三千米で日本第一の高山湖であり、ニノ池は最高所の高山湖である」
うーん、日本第一の高山湖と最高所の高山湖・・違いが微妙。
杖洗いの石
女人堂のかたわらには杖洗いの石という、小さな石製の水槽がある。名のとおりここで金剛杖を洗う慣しがあった。これはここより下が人界(俗界)、上が神域となっていて、賊界の泥を神域に持ち込まないためだとされた。
同じ理由で賊界の土のついた草鞋はここで脱ぎ捨て、新しい草鞋に履き替えたり、ここより上は女人禁制といったルールもあった。
9合目(2,830m)
9合目では登山道が山小屋の中を通る仕組みになっていて、おもしろかった。一応、迂回路もある。
二ノ池(9.5合目)
現在、日本最高所にある池とされるのが二ノ池。
しかし水はかなり減水状態。枯れてしまえば一ノ池と同じように、三ノ池に最高所の池の座を奪われてしまう?
二ノ池のインレットから火口壁を登る
ニノ池を取り囲む火口壁を這い上がり、壁の天端に沿って登りつづけるが、なかなか一ノ池の眺望が得られない。
ピークが近づいてきて人が増えてきた。一ノ池が見えたら、そそくさと引き返したい。
すれ違う人に一ノ池はもうすぐかと訊ねると、すぐそこだという。嬉々として進む。
池はまだか・・
もうほとんど頂上みたいだけど、池が見えない。
階段が
一ノ池が見えない。
階段まで来てしまった。しかし、ここに来て階段?
登頂してしまった
百名山には山池を持つものが多く、これまで数多くの百名山を登ってきたが、たいていはおめあての山池に会ったら、そこで引き返してしまうので、ピークは拝むのみで登頂するということがなかった。
一ノ池までもうすぐ、という言葉に励まされ登っているうちに、はからずも頂上に来てしまった。というか、池は頂上からしか見えなかった。
おそらく登った百名山の登頂率の低さでは自信を持って日本一といえると思っていたが、この御嶽山はもしかしたら初めての登頂?
登山ログ
ロープウェイ利用。一ノ池、賽の河原もまわり往復10.4km、獲得標高1,021m。
現地マップと案内板
2020年に王滝側からの登山路が開放されたが、まだ規制がかかっている区間もあり、行く前には最新情報を確認した方がよい。