「池の平」は裏切らない
丘陵状に広くなだらかな山塊が連なる地形にある山上湖。なんといってもここを起点とする林道は「池ノ平線」という名。
「池の平」という地名は全国でいくつか会ってきたが、この名をもつ地形は池フリークのハートを射抜く魅惑の山上テーブルトップの池ばかり。
それもそうだ。低地や平地に池があるのは、あたりまえ。「池の平」とわざわざ名付ける必要もない。
雲上の山の上、そんなありえないところに池をのせた平地があるからこそ、わざわざ「池の平」と呼びたくなるのだ。
静岡県の場合
そして、静岡県浜松の「池の平」。ここには、おおよそ七年に一度だけ現れるという幻の山池があるという。
もとはキャンプ場が隣接。
池のインレット側の小さな草原が鏡池マウントパークというキャンプ場になっていたが廃業。しかし池の所有権は個人が持っているらしく、池へのアプローチ路に入るには土地所有者の許可が必要との、小千谷市設置の看板が。
じつは溜め池だった
立地的に天然湖か、キャンプ場のために整備した公園池タイプの池かと予想していたが、実際に行ってみて驚いた。
人工の堤をもつ溜め池構造を持った池だった。
周辺には錦鯉養殖池が多い
小千谷は隣の山古志と並んで全国でもっとも錦鯉の養殖の盛んなところだが、このあたりにも棚池タイプの養殖池がそこそこ見られた。
下の空撮写真では鏡池の向こうに、水面を光らせた養殖池が見える。
池の所有者に会う
キャンプ場が廃業していたこともあって、道路標識が微妙だったこともあり、手前で道を間違って十日市方面の狭隘路に入ってしまった。あまりに狭い道でハイエースではギリギリのヤバヤバ。ようやく転回できそうな養殖池の一角で一服して引き返していたところ、散歩をしていた75歳のおじさんと会う。
池の道を訊くと、なんとこのお方、池の所有者とのこと。20年前に引っ越してきたそうだ。確かに関東ナンバーのクルマも停まっていた。キャンプ場の管理人として移住してきたということだろうか。
ハイエースの窓枠に肘をのせて、何とも気さくな感じ。
「池に行ったら、ジュンサイ採っていいよ。でも、一人でジュンサイとっても、さびしいな。こういうときはカノジョ連れてこなきゃな」
おもしろいおじさんである。
「熊に気つけてな。最近、出るからな」
そう言って見せてくれたのは、1万5千円したというアメリカ製とかいう熊スプレー。なんでも友人に試したら(!)、目が一週間もヤバかったとか。
「風下からちょっとシュッとやってみただけだったんだけどね」
いやいや、好奇心強すぎ。お友だちも。
山池さんぽでは、いつも熊に怯えている。鈴を付けてたためにかえって襲われたなんて事件も起きているだけに、有効な熊対策が欲しいところだったが、1万5千円はちょっと高すぎだなあと言うと、高いことあるか、命に替えられるものなんかあるか、と訓告を受けた。
でも、風下でテストされたお友だちの目がヤバかったというが、現場で熊に使って撃退したはいいが、自分も目をやられて下山できなくなるなんてことはないのだろうか。
おじさんが窓から体を乗り入れているもので動くに動けず、ふと気がつけば、後ろで軽トラックが待っている。
あの後ろがと言うと、「ああ、だいじょうぶだいじょうぶ」とまったく動じないおじさん、つづけて、
「池行ったら、うち寄ってきな。あそこの家だから」
マークした場所は駐車スペース。池へのアプローチ路入口と林道起点がある。