新冠川4ダムの旗艦
北海道電力が管理するロックフィルダム「新冠ダム」が堰く巨大人造湖。
1950年代、日高山脈を流れる4つの河川を導水トンネルと11のダムでつなぎ、北海道全土をカバーする壮大な水力電源開発をめざした「日高電源一貫開発計画」が発動。新冠川には四つのダムが建設されたが、上流から二番目にあるここ新冠ダムは地図で見ると逆十字架のような形状が何ともいえぬ怖れを抱かせ、そのスケールと存在感はまさに旗艦にふさわしい。
ダムサイトには「遊魚者のみなさんへ」と題されたフレンドリーな釣りの案内板もあった。
ダート林道の起点から40km・・。こんな奥離の水力発電用ダム湖が釣り場になっているなんて、目を疑った。
ボート、カヌーでの釣りは禁止とあるが、オカッパリできるような水ぎわに下りる場所なんてあるのだろうか。
他の3ダムでの釣りが禁止されているのに、ここだけ釣りができるのには理由があった。
夢の釣り場をめざした歴史
ダムの起工当初、観光資源となることを期待した町が北電の協力のもと、全国的にまだめずらしかったルアー・フライのフィッシングレイクをめざし、放流を行ない漁業権を設定した経緯もある。
放流したトラウト類は原生種に近いイワナ属をのぞいて定着が難しかったようだが、現在、アメマス、サクラマス、ニジマス、ヒメマス、ウグイなど多種の魚が生息している。これは数十年の間、釣り人が地道に放流してきものが繁殖したものと思われる。
ボート、カヌー禁止で、網場内も釣り禁止なので、深く刻まれたワンドやバックウォーター側からの入釣を試みるしかないが、谷が深く嶮岨なため、いきなりのビジターにはなかなか難しいと感じた。
異例ずくめの水力発電ダム湖
電力会社が所管する水力発電専用の秘境ダムを釣り人向けに湖面開放すること自体も全国的にめずらしいケースといえるが、新冠ダムにはもうひとつ、本来の目的外の洪水調節の運用もなされているという特殊事情がある。
隣の水系にある同規模の高見ダムは北電と北海道の共同事業という形で多目的ダムとして造られたが、発電専用の新冠ダムが洪水調節を担っている場合、どのような責任体系や法的裏付けがなされているのか、興味深いところではある。