水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

念仏池(長野県戸隠)

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歴史的な信仰の地であり神々しい空気が魅力の戸隠高原。
鎌倉時代に親鸞聖人がこの地を訪れ、小さな池のほとりで念仏を唱えたところ、池の底が沸き返ったように動いたという伝説が残る。
鬱蒼とした森の中にある小さな池なので航空写真でも確認することはできないが、すぐ近くにかなり立派なオートキャンプ場と百名山・高妻山の登山者用無料駐車場があるので、まず迷うということはないだろう。
駐車場の片すみに「越後道」という標柱があり、ここが池への入口にもなっている。

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森の奥へと誘われるように入ってくと、ものの数分で小さなスリバチ地形の肩に「念仏池」の碑があった。
遊歩道はスリバチを下り池のわきを通ってさらに森の奥へと続いている。
池は円形で直径数メートルと小さいが、かといって涸れそうにもないのは安定した湧水が水源となっているからだろうか。

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池の中をのぞきこむと、確かに湧水で砂が沸き返ったような痕跡がある。
親鸞上人の念仏に呼応するかのように池の底が踊るように動いたという伝説は、あながち想像しがたくもない感じだ。
親鸞は聖職者としてはちょっと変わった人で、公然と結婚をするなど、前例にとらわれぬ考えを持っていたようだ。師である法然の教えを生涯にわたって伝えようとしたが、30代のとき朝廷の弾圧で越後に流罪に。そして40代で関東に向けて布教の行脚に出ている。
そういえばこの池の入口に「越後道」とあった。決意の布教への旅路、その手始めの伝説となったのが、街道のかたわらにある念仏池だったということだろうか。

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マークした場所は駐車場。