予感に満ちた謎めいた名に惹きつけられる夏無沼。
人の命を奪う大猿の伝説をまとう口太山(843m)の登山口に位置し、一見、怖そうな秘奥の池の先入観をもってしまうが、アクセス路である舗装林道がちょっと狭くて長い以外は会いに行くのに特に障壁はなく、夏無沼自然公園としてキャンプ場や駐車場などが整備されている。
登山口といっても1〜1.5車線の舗装林道をかなり上りつめた先にあり、登山口から山頂はわずか20分ほど。夏無沼自体が口太山の肩にのった山池なのである。
日本酒グランプリ常連の二本松だが、町の名のとおり、この山の上の池でも松の木が印象的ある。松の赤い幹と力強い枝ぶりは、池を絵画のように演出してくれるが、一部、松枯れも見られた。
キャンプ場があるとはいえ、2019年現在も原発事故による除染作業がつづけられ、池での遊泳や釣りは禁止されていた。
夏無沼の名の由来は、夏でも冷涼な水をたたえていたことによるようだが、大蛇伝説もある。ここに棲んでいた大蛇が、農民たちによる水抜きに遭って土湯の雌沼へと引っ越しする話。
この伝説にあるように、夏無沼は農業用の水を抜くことができる構造を持っている。天然湖を想像していたが、実際に会ってみると、明瞭な溜め池構造を持っていた。
さて大蛇が移り住んだという土湯の雌沼であるが、「女沼」のことを指すものと思われる。