奥が深すぎる池看板の世界
池や湖沼には、さまざまな看板が設置されている。
池看板は、池に深く携わる人からの熱いメッセージ。作るのも設置するのもお金もかかるし、自治体や管理者団体の同意が必要だったり、けっして安易なものではない。そう思うと看板を見つけるや、思わず駆け寄ってしまう。
目次
新入荷!
油類の洗い物禁止
北海道の八郎沼にて。池でそんなことする人いるの?
沖縄定番のハブ注意
下は粟国島の溜め池にて。
妖界につき立入はご遠慮ください、って?
日本で唯一の池看板であろう。
「桜注意」看板
桜はふつう看板でことさら注意を喚起しなければいけないものではないはずだが、ここビン沼では美しい桜に気をとられるあまり事故を起こす事例が多発したのかと想像したくなる妖気ただよう看板だ。
桜が注意の対象なのに、「熊注意」なみの警告色(黄色ベースに黒と赤の文字)が強烈で、桜に見惚れるあまり命を落とす危険性がにじみているかのうような強烈な印象を残す。
埼玉県のビン沼にて。
いろいろな禁止看板
浪太郎が驚くので
新潟県糸魚川の高浪の池は、体長4m! 謎の巨大魚「浪太郎」で有名な池。遊泳禁止看板がなかなか粋で、「浪太郎が驚くので池で泳ぐのはやめてください」とのこと。英語も記されており、 Because Namitaro is surprised.と、果たしてこれを見た外国人は・・?
「ランニング禁止」なるものを初めて見て驚愕したのは2013年、長野県の女神湖でしたが、今や全国あちこちで犬の散歩禁止、猫へのエサやり禁止など禁止項目も多様性を増してきました。下の写真は横浜市の中池で見つけたもの。ベンチの長時間独占禁止。
ダム見学者に向けての「飲酒禁止」。山形県の桝沢ダムにて。
釣り禁止の連打。埼玉県嵐山にて。よほどいやなことがあったのでしょうか。
釣り禁止看板連打の京都版
関東のゴシック体に対して、明朝、手描き風でシンプルで筋の通った芸風に東西の違いを感じますね。
通学路で猟銃は怖い・・
一尾につき10万円
具体的かつ超高額罰金の釣り禁止。埼玉県にて。
神戸の奥須磨公園の池では、釣り禁止の方に罰金はないものの、タケノコ採り禁止の方は五万円と高額な罰金が。平均的な日本人が一生で食べるタケノコの総額ぐらい?
スッポン乱獲禁止
ヨシの刈り取り禁止
これもめずらしい。大阪府摂津の市場池。日本一モラルを問われる池でもある。
球技禁止
球技禁止なんて公園なのに・・と思うかもしれないが、そもそも「公園」という輸入概念ではParkとPlay groundは別個のものとされており、二つがごっちゃになってしまっているのが日本の「公園」事情。
多くの人が静かに憩えるparkと、運動をして遊べるplay groundに分離していこうという流れは、まっとうなものといえる。
にごり池公園(愛知県半田)にて。
ブチあぶない
岡山県の津山の方言だろうか。津山の野池に見られる共通看板。写真は鴻池(岡山県津山)。
富山県で見つけた看板。「用水だ!」以外の言葉は皆無。
注意喚起と捉えればいいのだろうが、何かを具体的に禁じているわけでもなく、おのれで考えるしかない。
看板を設置するのは手間もお金もかかる。そこまでして設置する以上は、強い思いがあるはずである。設置者にとっても高度な試みである。伝わるか、伝わらないかは分からない。分からないが相手に託す。そんな北陸の人間性の発露であろうか。
エサやり禁止
魚の「放電」禁止
岡山県の押ヶ谷下池にでかでかと掲げられた看板に、魚釣り禁止と並んで「魚の放電禁止」。
電気ショック漁法が世界的に禁止の流れなので、それを先取り?
日本一ドギツい共通看板
全国でもっとも成功した禁止看板デザイン。
規制看板の名義には地元自治体、地元警察の他、「土地改良区(水土里ネット)」「水利組合」「ため池管理者」が多い。看板設置は管理者側からすれば費用と手間がかかるため、自治体やため池管理者団体が一括して作成するケースがよく見られる。
中でも、子どもが水に落ちた図案を用いた統一フォーマットの看板は、全国に流通しており看板デザインとしてもっとも成功したものといえそうだ。
広島県東広島市や愛知県岡崎市で使われている。地域共通というほどではないが千葉県いすみ市や大網白里町、京都府向日市でも同じ図案の看板が使われている池が見られた。
「あぶない!!」という文字の下にイラスト、いちばん下に自治体名称というフォーマットが共通している。「あぶない!!」の文字は東広島が黒い文字を採用している他は赤い字が基本形のようである。
千葉県いすみ市で見つけたものは自治体名部分がなく、看板の縦横比は正方形に近いというバリエーションが見られる。
広島県東広島の三取池
アート性の高い看板。
岡山県玉野の共通感版。
池の絵を描くときに、なくてはならない絵の具メーカーの老舗Rowney社のCobalt Green Deep (325)を思わせる渋い地色をベースに、どこかムンクを思わせる訴求力の高い手描きタッチのこの看板は、岡山県玉野エリアの野池の多くに見られる共通デザインの看板。シュールな雰囲気にそそられる。
福岡県福岡および糸島で見つけた看板。
共通看板ではあるが自治体ごと、土地改良区ごとという枠組みを超えて、赤い羽根基金の補助を受けて作られた看板というところにマニアックな悦びがある。色彩、配置のバランスがよく、フォントもイケてる。特に字間の詰め具合がたまらない。看板設置者が自治体や土地改良区ではなく、「福祉協議会」というところも萌えポイント。
ちょっとシックな「八幡製鐵所」の釣り禁止看板。
茶色ベースの釣り禁止看板は見たことがなかった。
この看板が立っていたのは、産業遺産的、土木遺産的でヨーロッパの古城のような構築物のある養福寺貯水池。
そんな古風な雰囲気を意識した看板であろうか。どうせなら有刺鉄線付きフェンスも茶色にしてほしかった。
CMみたいな看板
上水道を担い、横浜市水道局が管理する鶴ヶ峰上部・下部配水池。
工事用のパネルに掲げられた看板がCMみたい。
北海道のシュールな注意看板【NEW!!】
野花南ダム(北海道芦別)で見つけたシュールなネコ。睫毛が怖い。