いやりだいいちちょすいち。
あるいは「女清水」をもたらしたオリジナル居谷里池?
二車線の快適な県道沿いにあり、じつにカンタンに会える貯水池であるが、いやいやよく見れば巨獣の骨のような倒木や、奥座敷の湿原、針葉樹と広葉樹のハーモニーといい、光や季節の条件がピタっとかさなる瞬間を待てば、かなりの絶景スポットのポテンシャルを秘めている。
居谷里湿原を水源とした二連のかさね池で、第一は上池にあたる。残念ながら釣りは禁止。岸にうずくまっている魚を見れば、立派な錦鯉。
それにしても居谷里第一貯水池という現代的な名前がもったいない。この池の上流にある居谷里湿原も地味ながら通好みの散策スポットだし、「居谷里(いやり)」の響きが味わい深いだけに「居谷里沼」なら感涙、せめて「居谷里一ノ池」とか。「居谷里湖」だと少々、世俗臭が出て「居谷里」のしっとりした味わいを相殺してしまう。じつに名とはおもしろいものである。
そうそう、ふもとの大町の商店街には通りをはさんで男清水と女清水が相対する。両方飲むと恋愛成就の御利益というのはキャッチーな触れこみであろうが、目の前にある水くみ場なのに水源が東西でまったく異なるという話に惹かれた。
なんでも男清水の方は西方にそびえる北アルプスの上白沢から町へと水路を引き、女清水は東方の居谷里という山里にあった池から水路で水を引いてきたという。水路の築造は室町時代と聞けばさらに驚く。このあたりは両清水を再訪した際にあらためて調べてみたい。
第二貯水池の下には広いチェーン脱着場があるので、池を訪れるならここにクルマを停めて歩けばのんびりできそう。堰体上は池を管理する農家の邪魔になるので駐車は避けたい。
マークした場所はチェーン脱着場。