【いわなべいけ】
何かと話題豊富なミニ満濃池。あえて弱点を設けて全体を守った。
室町時代に築造されたオリジナルの池をもとに、満濃池の再興で知られる江戸時代の池造りのプロフェッショナル・西島八兵衛さんがパワーアップさせた堤を築き、現在に近い姿になったと考えられている。
大正時代には、岩盤質の底をくり抜いた底樋を造るため、鉱山(やま)の男たちを呼び寄せて突貫したといい、何かと話題豊富な池であり、西島さんしかり岩盤トンネル水路しかり、全国溜め池のスターである満濃池と共通するものがある。
訪れたときは、完全水抜きの状態がかなり継続していたらしく、底一面に草が生えて草原のようだった。
改修工事が終わったあとだったのか、特に工事の痕跡は見られなかった。
じつは岩鍋池は明治時代に一度、大雨で決壊している。といっても切れたのは「盲堤」(めくらつつみ)という部分で、いざというときに堤本体を守るために、あえて弱く造っていた。そのおかげで、あっという間に修復されている。
すべて想定内なのだ。西島八兵衛さんの設計であろうか。あえて弱点を造るカッコよさにシビれた。
堤の左岸側には藤井神社があり駐車スペースおよび公衆トイレがある。ここは、標高136mの藤井山山頂にある藤目城の登城口にもなっており、二の丸跡を経て山頂までのハイキングも楽しめ、寺社あり城跡ありの池なのだ。
上流側に新池をはじめ新しいダムが造られるたびに争いがおきたというが、解決策はなんと県境の山向こうを流れる吉野川の水を引いてくるという壮大なものだった。次に訪れる際には香川用水の導水路がどうなっているのか見てみたい。
盲堤があったのはどのあたりだろう。コンクリートという素材を手にした現代の溜め池では、コンクリート洪水吐と導水路が大雨から堤を守る役割をしている。
岩鍋池の洪水吐(余水吐)は手前側に鋼製の可変ゲートが追加されていて、なんともゴージャス。
マークした場所に駐車場。