【箱島湧水ダム】
明治時代にロックフィルダムがあった?
「箱島(はこしま)湧水」という名水百選を水源とした贅沢な水力発電用ダム。竣工はなんと、明治43年(1910年)!
ランプやローソクの時代に電気の灯りを地域にもたらした水力発電用の堰堤。ただ、「箱島ダム」という名は正確な名称ではなさそう。それもしかたない。現地の案内坂には「ロックフィルダム」としか記されていない。
「群馬県初のロックフィルダム」ということだけど
箱島ダムは明治43年(1910年)に完成し、群馬県初のロックフィルダムとの記述を読んで、ええっと浮き足だった。
明治時代にロックフィル?
ウィキペディアには1956年(昭和31年)に完成した野反ダムが「日本の発電用ダムとしては初めてのロックフィルダム」と記されている。
ちなみに野反ダムがあるのも群馬県。
同じ県内に隠れナンバーワンが?
本当ならば最古ロックフィル論争に終止符
日本最古のロックフィルダムについては、ちょっとややこしいところがあって、「日本で最初に工事着工したダム」を最古とするか、
「いやいや、先に完成した方でしょ」とするか、
「水没しちゃったのとか、現役で動いてないのはだめでしょ」とか、
簡単にいえばそんな事情で四つの最古候補がせめぎあっている。
野反ダムについても「現役の水力発電用ダムとして」という条件付きナンバーワン。
しかしこの案内板の記述が間違っていなければ、野反ダムを2位に蹴落とし、発電用ダム最古、群馬県最古、それどころか国内ロックフィルダム最古にして、日本で唯一の明治時代に竣工したロックフィルダムということで決着となる。
箱島ダムと野反ダムの皮肉な関係
ただし1956年(昭和31年)に発電所は廃止。
この同じ年になんと野反ダムが完成。まるで「現役として日本最古の水力発電ロックフィルダム」の座をバトンタッチしたような皮肉なめぐり合わせ。
水力発電用ダムとして復活
しかしまだ続きがあった。
2017年6月にPFI事業としてダムを再活用した「箱島湧水発電所」が稼働を開始。
もう野反ダムに「現役じゃない」とは言わせない。
そんな復活劇だったが、貯水池の中は草ぼうぼうで、ごうごうとしぶきをあげる滝の流れが池底の水路を通っている感じ。
よく見れば池底に小さな堰堤が設けられていて、取水口が据えられている。
いってみれば、ダム・イン・ダム。
明治の堰体を使っているわけではないのである。
そんなわけで確かに水力発電として現役といえば現役だが、明治ロックフィルダムの方は、家業を復活させた孫を隣から見守るおじいちゃんとでもいった役割なのであり、それで現役といえるかというと、ちょっと苦しいような・・。
しかし、そもそもの話・・
ここまで話を引っ張ってきて恐縮だが、箱島堰堤が日本最古のロックフィフダムとして決着するには、あの小さな案内板に記されていることが正しくなければならない。
日本でハイダムとして認められるのは堤高15m以上。見た感じ、微妙に足りていない気がする。
そもそも現地案内板に記されていた「ロックフィルダム」というのは本当なのか?
構造が、かなり微妙
堰体の下流面は草が生い茂っていてアースダムのようにも見える。ロックフィルダムかどうかは、この時点では分からない。
上流面を見ると・・、あれ?
垂直に石組みされている。こんなロックフィルダムって、あるのだろうか。それとも後年に背面部だけ改造?
石組みは1900年に竣工した、日本初の重力式コンクリートダムである五本松堰堤(兵庫県)に似ている感じもする。
ロックフィルダムではありえないアレ
石を積み上げたロックフィルダムは洪水吐部分が鬼門になるため、堰体とは別のところにコンクリート造りのがっしりしたものを設けるのが一般的。
とにかく岩を積んだところに水を通したくないのだ。
しかし、箱島ダムはどうだ。どかんと堰体のセンターに洪水吐があるではないか。
全国のおもだったロックフィルダムを見てきたが、こんなものはちょっと記憶にない。
オリジナルのロックフィルダムが改修されて別形式になった可能性もなくはないが、日本最古のロックフィルダムと言うには、もう少し検討が必要かと思った。
怪奇伝説も
スリリングな妄想で楽しませてくれた箱島堰堤だが、インレット側にある箱島不動尊には不思議な伝説も残っている。
題して「湧水の怪」!
アプローチと駐車場
アプローチ路は狭く少々路面が荒れた急坂だが、国道から距離は短かい。大型車は厳しそう。
駐車場は舗装。直売所、トイレが付属。
駐車場からは未舗装林道を徒歩で100mほど。
Google マップ
マークした場所は駐車場。