溜め池なのに、下水道課が?
行者池は航空写真で見ると直列四段、並列二段のかさね池の最下段にあり、構造から容易に溜め池であることが予想できた。
バイパス道路沿いの現地に立つと、緑のネットフェンスに「池に入るな!!」「魚つり禁止」「許可なく池敷に立入ることを禁止する」とものものしく掲げられた看板。設置者は農家組合をはじめ財産区、警察署の連名で、やはり農業用の溜め池であることを確信。
池に沿うバイパス道を下り、行者池の吐き出し側に着いたとき、まったく予想もしなかったものに出会った。それはポンプ設備にあった文字。
「雨水横越流分水施設」とあり、その横に「呑龍太郎」というマスコットが描かれたポップな看板。看板設置者は、京都府と向日市上下水道部下水道課。
「横越流分水施設」という言葉は初めてだし、溜め池の取水口にある施設を下水道課が管理しているというのも、まったく初の体験だ。(横越流分水は、じつは調整池への流入口でよく見られる、水路に沿って設けられた越流堤による分水方法のことだった)
貯水池にしても溜め池にしても、そこに貯めているのは生活や仕事に使うための水であって下水を貯めているわけではない。なぜ下水道課が??
さらに案内板を見てみよう。
行者池流入口?
溜め池の感覚からすると、この場所は流入口の反対、吐き出しのはず。
これは行者池の吐き出しが「いろは呑龍トンネル」の流入口にもなっているという意味のようだった。
京都市、向日市、長岡京市の桂川右岸エリアを洪水から守っているのが、地下トンネル式調節池の「いろは呑龍(どんりゅう)トンネル」。
「調節池」という言い方をしていないが、確かに二ヶ所に設けられるポンプ施設以外は地下神殿のようなSNS映えする地下ダム感はなく、見た目は大きな下水道管。
2013年に桂川が氾濫して嵐山に大きな被害があった際に、この地下調節池は100パーセントの満水となった。もしこの施設がなかったら被害域は嵐山以外にも広がっていただろう。
呑龍トンネルの工事は完成に向けて今もつづいており、令和二年には暫定供用開始。全体の完成は令和五年の予定。